もう家族のお金も頼れない…日本社会の本当の崩壊が始まる

出生数90万人割れの意味とは?
大内 裕和 プロフィール

親と同居する独身未婚者の急増

非正規雇用労働者をはじめとする低処遇労働者の急増は、若年層の未婚化をもたらしている。その一方で進んでいるのは、親と同居する独身未婚者の急増である。

総務省統計研修所の「親と同居の未婚者の最近の状況」(2016 年)によれば、親と同居する壮年未婚者(35歳~44歳)の人数は、1980年の39万人から2016年には288万人へと7倍以上に急増している。

また親と同居する若年未婚者(20歳~34歳)の数は、1980年の817万人から2016年には908万人に増加した。この増え方は壮年未婚者よりも少ないが、それは若年層(20歳~34歳)の総人口が急減していることが影響している。若年層(20歳~34歳)の総人口に占める親と同居している若年未婚者の割合は、1980年の29.5%から2016年には45.8%まで上昇している。

家賃をはじめ住居費が高い日本社会の現状からすれば、壮年未婚者や若年未婚者が親と同居しようと考えるのは、ある種必然的な行動であるし、誰にもそれを責める権利はないだろう。彼らの行動様式は貧困化に対処するための「生活防衛」だと言ってもよい。

 

「日本型雇用」の代替案の不在

問題なのは、貧困化する若者を家族が抱え込むことにより、「若者の貧困化」の社会問題化が遅れて、「日本型雇用」に替わる生活保障のシステムをつくってこなかったことだ。

戦後日本の生活保障を支えてきたのは、高度経済成長時に形成された「日本型雇用」である。正規雇用に就くことができれば、終身雇用と年功序列型賃金が保障され、それが生活の基盤となった。高い教育費や住宅費の負担も、日本型雇用によって支払うことが可能な人々が多数を占めていた。

高度経済成長を前提にする「日本型雇用」を転換する動きがなかったわけではない。公害問題など高度経済成長の矛盾が噴出し、地方自治体でも福祉を重視する「革新自治体」が続々と誕生していた1973年に、自民党の田中角栄内閣は「福祉元年」を唱え、社会保障の拡充が目指された。

しかし同年の石油ショックを契機とする経済成長率の低下によってその方針は撤回され、1979年に「企業の成長」と「家族の協力」を軸とする「日本型福祉社会」が自民党によって提唱された。

その後は「小さな政府」論に基づく行政改革と社会保障の削減が進められた。

1980年代における中成長とその後のバブル経済の到来は、社会保障の拡充や普遍的福祉などがなくても、「正規の仕事について一生懸命に働けば何とかなる」という大衆意識を再び人々に浸透させた。

しかし、1990年代初期のバブル経済の崩壊、1997年のアジア通貨危機以後の長期経済低迷と雇用を不安定化させる新自由主義政策によって、1990年代半ばから後半をピークに労働者の所得は低下し続けている。企業の成長と家族の協力を軸とする「日本型福祉社会」において、企業の成長が十分でなくなれば「家族の協力」が唯一の拠り所となる。

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