「日本は欧米と価値観を共有してる」その認識、ビジネスリスクの温床です

ゴーン事件で浮き彫りになったこと
加谷 珪一 プロフィール

著名投資家のウォーレン・バフェット氏は、堅実な投資手法で有名だが、彼は日本市場には頑なに投資しない。バフェット氏は日本にもファンが多いので、日本人への一種のリップサービスからか、明確に理由は語っていないが、日本の社会制度に不信感を持っているのは明らかである。安倍晋三首相がいくら日本企業への投資を呼びかけても、日本に海外から資金が集まらないのは、日本では、欧米とは異なる価値観やルールが存在していると先方が認識しているからである。

バフェット氏〔PHOTO〕Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

異なる制度を運用しているにもかかわらず、「わたしたちはあなた方と同じですよ」と説明し、その後、気に入らない事態が起こると一転して指弾するというのは、致命的な対立を生む可能性があり、非常に危険な行為だが、日本人にはその認識があまりない。

 

無意識的な承認欲求が働いている可能性も

経済やビジネスの分野においても中華圏と日本の違いは歴然としている。米中対立の渦中にある中国企業ファーウェイ(華為技術)は、急成長した中国の巨大通信機器メーカーだが、その経営実態は不透明極まりない。

執行の責任者(CEO)は輪番制となっており、誰が本当の責任者なのか外部からは分からない。取締役会は創業者とその家族が実質的に支配しているが、取締役会を監督し、会社の所有者であるはずの株主は、ほとんどが従業員である。従業員は会社から命令を受ける立場なので、理論的に経営者を監督することはできない。

欧米流のガバナンス理論からすれば、まったく不可解な組織だが、彼等はこれを中国式であるとして、欧米とは違うのだと明確に主張している。欧米社会は、ファーウェイのことを不透明な企業とみなしているが、欧米とは異なるルールで運営されていることについては理解しているので、不用意な行き違いは生じていない。当然のことながら、そんな企業に投資したいと考える欧米投資家はいないし、中国側も求めていないだろう。