「日本は欧米と価値観を共有してる」その認識、ビジネスリスクの温床です

ゴーン事件で浮き彫りになったこと
加谷 珪一 プロフィール

ここで重要なのは、この価値観が絶対的に正しいかどうかではなく、民主主義や民主国家における刑事司法のあり方というのは、もともと相手(欧米)が作り出したものであり、日本が作り出したものではないという点である。

相手が作った価値観やルールを日本が受け入れている以上、相手はそれに合致しないものは「違う」と解釈するに決まっている。会見でゴーン被告は自分は(欧米でいうところの)人権侵害を受けたと主張しているわけだが、欧米各国の人たちは、日本は基本的な人権が守られない国なのだとそのまま理解したに違いない。

 

ところが日本側はそう認識していない可能性が高い。国内では「日本の司法制度が誤解されているので、誤った認識をただすべきだ」という声が多い。実際、ゴーン被告の逃亡を受けて記者会見に臨んだ森まさこ法務大臣は日本の刑事司法について「あらゆる機会をとらえて誤解なく正確な理解をいただけるよう発信していきたい」と述べており、誤解が生じているとの立場に立っている。

森法務相〔PHOTO〕Tomohiro Ohsumi/Getty Images

誤解というのは、双方が同じ価値観やルールを持っているにもかかわらず、相手がそれを理解していないという意味である。だが、今回のケースはそうではない。日本は明らかに欧米とは異なる価値観や制度を持っており、先方もそう理解しているので、誤解が生じているわけではないのだ。今回のケースでは(それが良いことかは別にして)「あなた方とわたしたちのルールは違うのだ」と主張しなければ本当のコミュニケーションは成立しない。