保阪正康「人生最高の10冊」は?近代国家の発展の裏を描いた作品たち

犠牲になった名もなき人たち
保阪 正康 プロフィール

政の心』は衆議院議長も務めた政治家・前尾繁三郎の自伝です。政治家の自伝と言うと、普通は自慢話が多いのですが、前尾さんが本書で行っているのは、保守とはどのような精神を指すかという分析です。

彼の見解では、保守とは革新派よりもさらに時代の変化を注視し、その上で変えるものは変えて、残すものは残すということ。安直に伝統を守るのが保守ではないという、深い教養の中で生まれた考えが記されています。

「乱読」という言葉もありますが、私は「雑読」派です。特定のジャンルに集中させるのではなく、トルストイのような文芸大作から道に落ちている新聞まで、頭を柔軟にして、なんでも読む。

読書とは教養、娯楽でありつつ、人生の指針にもなる。私自身、雑読をするうちに、書かれていることと自分の距離が次第に縮まっていきました。

そしてある時、「自分だって書ける」という、物書きを志す瞬間がふいに私のもとを訪れたのです。(取材・文/若林良)

▼最近読んだ一冊

「戦争という概念を問い直す一冊です。私にとってのキーワードは“福祉”で、総力戦における戦争福祉の中から現在の福祉国家の基盤は生まれているため、戦争と福祉の密接な結びつきを考えるべきという主張があります」

保阪正康さんのベスト10冊

第1位『世界を揺るがした10日間
ジョン・リード著 伊藤真訳 光文社古典新訳文庫 1540円
レーニンからの絶賛を受け、アメリカ人でありながら「社会主義革命の英雄」としてのリードを認知させた一冊

 

第2位『冷血
トルーマン・カポーティ著 佐々田雅子訳 新潮文庫 940円
カンザス州で発生した残忍な殺人事件の内実に迫る。「デビューの少し前に読み、執筆の上で大きな教示を受けました」

第3位『宇宙からの帰還
立花隆著 中公文庫 800円
地球を飛び出した宇宙飛行士たちが新たに獲得した視点とは。「日本のノンフィクションの方向付けをした一冊です」