Photo by gettyimages

保阪正康「人生最高の10冊」は?近代国家の発展の裏を描いた作品たち

犠牲になった名もなき人たち

たった一度だけ

世界を揺るがした10日間』は、今からおよそ100年前、アメリカの青年が革命真っただ中のロシアに赴き、そこでの体験をルポルタージュにまとめたものです。文字通り世界史における転換点で、歴史的な変革の場に立つことはそれ自体が僥倖なのだと感じました。

リードは出版からまもなくして夭折します。他にもジャーナリストとして、メキシコ革命のルポルタージュなどいくつか作品はあるのですが、完成度や衝撃度はこの本に及ぶものではありません。彼の才能はたった一回、歴史的な場で最大級に発揮されたのです。

 

カポーティの『冷血』は、ノンフィクションとは何かを教えられた一冊です。ある殺人事件について探求する作品ですが、事実を述べたり、調べたことを列挙したりするだけではなく、作者の目が大事だと学びました。

トルーマン・カポーティ(Photo by gettyimages)

人間のいろんな側面がカポーティの目を通して描かれていて、それだけ世界の膨らみが感じられます。起承転結に留まらない語りの豊かさを、本作で実感することができました。

日本の下層社会』は明治期のジャーナリスト・横山源之助の作品です。文明開化ののち、帝国主義的な道を選択していく日本に生きた、庶民の生活の実態が描かれます。

日清戦争の勝利のような「正史」ではなく、その「裏」を生きた人々がどういう生活をしていたのか。彼らの貧しさの中に、教科書には載らない日本のもう一つの顔が見えます。歴史では上部構造ばかりが語られますけど、下部構造にある生活を見なくてはならないと痛感しました。