ついに中国に訪れた「バブル経済清算」のとき、一体何が起きるのか

荒療治は避けられない
津上 俊哉 プロフィール

信用秩序のほころびが始まる

成長減速を前にしても景気アクセルに及び腰なのは、これ以上借金と投資頼みの成長を続けるのは無理だと悟ったからだ。

リーマンショック後、4兆元投資が始まった2009年から昨2019年までの11年間に行われた固定資産投資累計額は500兆元(≒8000兆円)を超えた。

この過程で中国のバランスシートに、収益や経済効果を生まない不良資産(投資財産)とその乏しい事業収益では償還できない不良債務が山のように溜まった。

 

そうなると、債務不履行や企業破綻が多発して「バブル崩壊」が誰の目にも明らかになるものだが、中国には「隠れた政府保証」慣行がある。

コネのない私営企業は対象にならないから潰れるが、地方政府や国有企業、特権的コネのある私営企業は、債務が履行できなくても、1~2ヵ月経つ間に不思議と資金繰りがついて利払いが再開できるのだ。

「最後はお上が何とか善処してくれる」という安心感、信頼感が中国の信用秩序を支えてきた。

しかし、2019年は、この慣行が綻び始めたことを報せるニュースが相次いだ。

1)地方政府の利払い事故が多発
地方政府の資金調達窓口会社が銀行借入や発行社債の利払いができない事件が激増した。裁判所の「失信被執行人」というブラックリストに載せられた地方政府は、2018年は通年で100件だったのに、2019年は1~10月だけで831に達した」という(“Contractors hit as China local government defaults rise”「フィナンシャルタイムズ」2019年11月11日付け)。

2)地方中小地銀で取り付け騒ぎが起き始めた
発端は5月下旬に内モンゴルの小規模銀行包商銀行が破綻、人民銀行が同行を公的管理下に置いたことだった。

人民銀行は「すでに預金保険制度がスタートしている」ことを理由にペイオフ(大口債権カット)を断行したのだが、これが大口債権者の「隠れた政府保証」信仰を裏切る結果となった。

ショックを受けた債権者は「全額保証がないのなら……」とばかり、これら銀行の主たる資金取入れ口である譲渡性預金証書(CD)市場から資金を引き揚げ、同市場の利回りが急騰してしまった。

地方の中小地銀は、地元政府のお財布にされて財務状態が悪化しているところが多いので、不安が拡がり、2019後半は報道されただけでも5行の中小地銀で取り付け騒ぎが起きた。

「隠れた政府保証」信仰に支えられた中国の信用秩序が以前ほど安泰でなく、市場を不安にさせれば、事件が起きるようになったことを物語る。

3)国有企業の実質破綻
2019年11月日本の総合商社とも取引のある天津市の国有企業「天津物産集団有限公司(Tewoo Group Co., Ltd)」が実質的な債務不履行状態に陥り、ドル建て社債の債権者に大幅な債権カット、または利率を大幅に下げた他の会社の社債への乗り換えを選ぶよう求めた(2019年11月26日付け「ブルームバーグ」)。

12月には内モンゴル自治区フフホト市の経済技術開発区の投資会社が債務不履行を起こした(2019年12月10日付け「ロイター」)。

前者は沿海の直轄市(省級)である天津市の直轄企業が外債債権者に損失を負担させるという、全中国でも過去20年起きたことのない事件である点で、また後者は地方政府の下部機構が起こした事件である点でショッキングだ。

今後国有企業に対する市場の与信態度も厳格化するから、2社の後を追う国有企業が増えるだろう。

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