ですが、このプロテインバーはそんじょそこらの栄養食品とは一味違います。なんせこれ1本に25匹分の「コオロギ」が!
……あの、ドン引きしないでください。本記事を読めばこれがどれほどすごいのかきっとわかっていただけることでしょう。いざ、めくるめく昆虫食の世界へ!
いま、昆虫食が注目を集めています。
栄養価が高いだけでなく、低コストで簡単に生産でき、環境への負荷も低い昆虫食は、人口の増加が加速する中で、牛や豚に替わる有望なタンパク源になり得ると期待されています。そうした中、コオロギのパウダーを含んだプロテインバーを2018年11月より販売開始したのが株式会社BugMoです。
「BugMo CRICKET BAR(バグモ・クリケット・バー)」の名称で、抹茶味とチョコレート味のバーを毎月1000本のペースでオンラインやスポーツジムなどで販売しています。
なぜコオロギなのか。どのように作られているのか。そこに込められた思いと可能性は――。
同社を共同で立ち上げた松居佑典(まつい・ゆうすけ)さんと西本楓(にしもと・ふう)さんに、お話をうかがいました。
世はまさに「大コオロギ時代」
──日本では、コオロギを食べ物としてとらえている人は少ないと思います。なぜコオロギに着目したのでしょうか?
松居 第一に、コオロギはとても栄養価が高い、という点が挙げられます。タンパク質、オメガ3、ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれていて、良質なたんぱく質と大切な微量栄養素を一度に摂れるという点で、食材として魅力的なのです。
加えて、生産する上でのメリットもあります。コオロギは、育てるのに必要な餌が少ないため、牛や豚を育てる場合のように、飼料を得るために熱帯雨林を伐採したりする必要もありません。また、場所や技術力を問わず簡単に育てられることから、途上国で、現地の人が自ら生産するのにも適しています。
そのように、栄養面での魅力に加えて、いま世界が抱える複数の課題を解決する可能性を持っています。それが、私たちがコオロギに着目した理由です。

──ちょうど今朝も、ベトナム、東ティモール、タイへの出張から戻られたところだと聞きました。
西本 はい、そうなんです。私たちのプロテインバーに使っているコオロギは、現在、タイ東北部の農家で、生育、そしてパウダーへの加工まで行っています。
その地域では、伝統的にコオロギを食べる習慣があるんです。今回、よりおいしいコオロギのパウダーを作ってもらうために、焼き方や乾燥の方法の調整に現地まで行ってきました。
また、東ティモールは、新しい製造拠点を作れないかを検討するための視察で、ベトナムは、すでに似たビジネスをやっているところがあると聞いたので、見学させてもらいに行きました。複数の国に、製造の場を広げていけたらいいなと思っています。
「蟻かけ卵焼きご飯」が人生を変えた
──お二人はどのような経緯でコオロギのプロテインバーを作ろうと思ったのでしょうか?
西本 まだ数年前のことですが、大学1回生と2回生の時に、海外のインターン事業を運営する学生団体のメンバーとしてアフリカのウガンダに行く機会がありました。
その時、現地の小学校で見た給食が、豆とコーンパウダーを固めたものくらいしかなくてかなり貧相だったことに驚かされ、何とかできないかと考えました。