元Uber社員、自動運転責任論を斬る「トロッコ問題はナンセンス」

実現へ最後のカギは「政治力」!?

後者は要するに『人間が2つの目だけで距離を測れているんだから、機械にできないはずはない』という理屈ですね。

今のところ、テスラだけが後者のスタンスを取っており、カメラのみで距離を認識するためにカメラメーカーと協業したりしています。ある意味、これはテスラの賭けとも言えるでしょう。

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個人的には、現段階ではレーザーとカメラ両方を使えばいいと思います。技術革新が進んでコストが下がり、カメラだけでも安全が確保された状態で距離が測定できるようになってから、はじめてカメラのみの方式にチャレンジすればいい」

 

潮流は「基盤のオープン化」

──自動運転開発企業のなかで、現在トップを走っているのはどの企業なのでしょうか?

「自動運転開発企業は、大別すると2種類に分けられます。

ひとつは、ソフトウェアを作っている企業が自動運転に参入するケース。Googleの自動運転車開発部門が分社化して生まれたWaymoなどが代表例です。

Waymo CEOのジョン・クラシク Photo by Getty Images

もうひとつは、従来の自動車会社が、所有するハードを活かして自動運転に参入するケースです。

現在、その2つの業種が積極的にパートナーシップを進めている状況です。トヨタがUberに10億ドルを出資したり、フォルクスワーゲンとフォードがArgoに31億ドルを出資したりしたのは記憶に新しいですね。

余談ですが、Uberにいたころのエンジニアの同僚いわく、今から自動運転の会社をゼロから作っても、まだトップになれる余地がある。それくらい、まだ突き抜けた企業が出てきていない印象ですね」

──自動運転業界全体として、大きな潮流のようなものはあるのでしょうか?

「自動運転開発の基盤をオープン化する流れが来ています。代表的なのはBaiduの自動運転基盤である『Apollo』です。Apolloは完全オープン化し、走行データや性能評価のソフトなどもすべてオープンにするプラットフォーム戦略を取っています。

個人的な意見としては、そもそもBaiduなどのソフトウェア企業は、車など現実のアセットを持つ企業ではありません。そのため、自動運転開発競争においてトップにはなれないと思っています。自動車会社も現状では車を作って売る会社でしかないので、同じ理由でトップは難しいでしょう」

「自動運転車事故の責任は誰?」はナンセンス

──自動運転は法律面でも解決すべき問題が多くある印象です。

「法律についてはまだまだ作成途中の段階で、そのためグレーゾーンだといえます。

ただ、よく『自動運転車が起こした事故の責任は誰が負うか?』という議論がありますが、その議論はナンセンスだと思っています。事故は普通の車でも起きます。

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トロッコ問題なども同様です。倫理的な二者択一の状況になる前に、自動運転開発企業は、そもそもそのような状態が起きないようにテクノロジーを駆使するでしょう。

たとえトロッコ問題のような状況が起きたとしても、現時点ですでに膨大な数の事故を起こしている人間が車を操作するよりは安全だと考えます。

それよりも重要なのは、人間の運転より安全な完全自動運転の実現と、その普及です。