最凶哺乳類が侵入していた!

大事なものと不用品を分類し、不用品と判断したものは容赦なくゴミ袋に放り込んでいった。流しの腐った水を捨て、食器を洗って棚にしまう。冷蔵庫の中の保存食類は、ビニール袋に入れたりして廃棄。座卓の下に詰め込まれた、食べ物の残骸も処分。

畳敷きの部屋には衣類が敷き詰められていた。きれいなものは畳んでタンスに、と思って作業していると、妙なものがばら撒かれていることに気づいた。お掃除隊一同で代わる代わるじっくり観察したのち、誰かが口に出して言った。

「ネズミの糞……」

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鳥肌がたった。

黒っぽくて耳の小さいクマネズミが、何匹も縦横に走っている姿が目に浮かんだ。

「おばちゃん、ネズミの糞があるよ」。
伯母は顔色ひとつ変えない。
「そうよ。夜になると出るの。天井も走り回るのよ」。
母は知らんぷりしている。

ゴミで埋め尽くされているだけならまだしも、とうとうネズミの侵入を許してしまったのか。ネズミといえば、病原菌の運び屋である。腸チフス、サルモネラ菌、レプトスピラ症などなど、病原菌のデパートと言ってもよい。場合によっては命にも関わる不衛生な環境である。

一同ショックを受けながら、黙々と働いた。畳が見えるようになったところを掃いて、ほこりとネズミの糞を掃除機で吸い込む。

積み重なった衣類も、その上を小さな哺乳類が走り回ったはずで清潔とは言い難い。洗濯しきれないので、大半は処分することにした。あとで新しい衣類を買えばよい。45リットルの袋では間に合わず、途中で70リットルの袋を買い足した。

ゴミ袋がパンパンに膨らんで、玄関に積み上げられた。ゴミの収集日は翌日だ。翌朝までどこに置こうか。ゴミ集積所は目と鼻の先なのだが、可燃ゴミを前日に出しておくことはできない。さんざん考えて、家の通路の出口側に置くことにした。敷地の内側といっても、お隣さんの目に入る位置に置くことになる。晴子叔母と、お隣のおじさんに事情を説明しに行き、ご迷惑をおかけします、とひたすら頭を下げた。

念のため清掃事務所に連絡して説明すると、事情が事情だからと、通路から回収してもらえることになった。