「セクハラ罪という罪はない」と思う人は、『自由論』を読みましょう

功利主義者よ、汝の隣人を愛せ
石井 徹 プロフィール

ミルには実の子供がいませんし、独身時代も長い。もしミルが独身の頃、捨て子を拾ったらどうしたでしょうか? ミルは人格者ですがさほど裕福ではありません。独身で子供を育てる自信もないため、可愛いと思っても施設に入れざるを得ないでしょう。

 

ベンサムの『最大多数の最大幸福』をまんが学術文庫で出す際、当時のイギリス社会の状況を調べました。救貧法、新救貧法などが制定されてある程度福祉政策は行われていましたが、貧しい人々向けの施設は非常に劣悪な環境でした。当然、孤児を収容する養護施設も酷いものです。

この時代を舞台にした映画では、収容されている孤児たちは労働を強要され、政府からの物資を施設長が横領するのが定番です。『あしたのジョー』の少年院をイメージしていただければわかりやすいかもしれません。

当時の施設がこれほど劣悪だとミルが知ったら、間違いなく子供を引き取って自分で育てるでしょう。そこでなぜかマーク・レスターの顔が浮かんできました。ミュージカル映画「オリバー!」の主人公です。原作小説『オリバー・ツイスト』はイギリスの作家チャールズ・ディケンズの作品です。読んだり、観たりした経験がある方も多いでしょう。ディズニーでもアニメ化されています。

オリバー役を演じたマーク・レスター[Photo by GettyImages]

もしディケンズの『オリバー・ツイスト』と、ミルの『自由論』が融合したら……、こうしてプロットが決まりました。ちなみにミルの生没年は1806~1873年、対してディケンズは1812~1870年。どちらも19世紀イギリス社会を生きた同時代人です。

法律を守れば何をしてもいいのか?

ミルが今日の「自由主義」に多大な影響を及ぼしたのは確かです。しかしながら、ほとんどの人が勘違いしています。「法律守っていれば何をしてもいいだろ」と思っている人が圧倒的に多い。かつて『ドーラク弁護士』という弁護士漫画を担当しました。高嶋政伸さん主演でドラマにもなったので、ご存知の方もいるかもしれません。現在はマンガ図書館Zというサイトで全巻無料公開されています。

こちらも原稿を読んでコメントしなくてはいけないので、担当している期間は毎日刑法や民法の勉強です。裁判の傍聴や弁護士へのインタビューにも行きました。少々怪しげなブローカーの人にもお話を伺いました。そこでハタと気付いたのです。

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