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「培養肉」普及への「2つの壁」と「4つの作戦」を第一人者が語った

「人工肉ハンバーガー」爆誕の日も近い
「培養肉」がSFの世界だった時代はもう終わりました。「培養肉」の焼肉やステーキを食べることになる時代は、もうすぐそこまで来ています。

そこで今回は、培養肉研究の最前線を走っているマーストリヒト大学のマーク・ポスト博士に、培養肉を社会に浸透させるための戦略を教えてもらいました!

(聞き手 サイエンスライター 室井宏仁)

2019年11月15日(金)から17日(日)の3日間にわたって開かれた「サイエンスアゴラ2019」。

「Human in the New Age ──どんな未来を生きていく?」をテーマに、将来想定される生活から現在の科学技術のあり方を逆算しようとする試みが多くなされた。

なかでも注目度が高かったのは、オランダ・マーストリヒト大学教授のマーク・ポスト博士を招いた「培養肉」に関するトーク・セッションだ。

マーク・ポスト博士

動物由来幹細胞を用いた食用肉生産技術を世界で初めて確立した博士は、現在その商業化を目指すバイオベンチャー、モサ・ミート社(MosaMeat)の最高科学責任者もつとめている。

2019年11月17日、テレコムセンタービル(東京都江東区青海)での講演を終えた博士に培養肉と社会との関係について聞いた。

元・医療研究者は、いまや培養肉に首ったけ

──博士は今や培養肉の研究開発の第一人者として知られていますが、キャリアの初期からこの研究をされていたのですか?

もともと私は、細胞培養を医療に応用するために組織工学を研究していました。現在進めている培養肉の研究は、細胞培養の技術を食料生産に応用しようとするものです。

その過程で、私が取り組む活動の内容も変化しました。食という分野は、将来的に見込まれる需要の規模や人々との関わり方といった点で、これまでの医療応用とは大きな違いがあるからです。

たとえば、規制の枠組みやそれらに対する人々の見方も異なってくるでしょう。

 

──培養肉の生産に関して、現在最も重大な課題は何でしょうか。

大きく2つあります。1つは生産量のスケールアップです。これを阻んでいるのは、培養肉生産時の技術的不確定性です。

過去、バイオ産業における抗体やタンパク質の製造では、こうした不確定性の排除が実現されてきましたが、生体組織の製造ではまだ達成を見ていません。

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2つ目は、培養肉生産にかかるコストの問題です。

これを解決するためには、先に述べた生産に関わる技術を改善するだけでなく、原料の調達を含めたサプライチェーンを組織することも必要です。

これによって、細胞を成長させるのに必要なものをより安価に入手することが可能になるでしょう。

培養肉普及の「4つ」の戦略

──培養肉を普及させるためには、何が必要だと思われますか。

大きく4つの戦略があります。