2020年の最大リスク、米中「3つのブラックスワン」の危ない正体

予想を上回る衝撃が世界に走る
広木 隆, マネクリ プロフィール

2. E-人民元の登場 ドルの基軸通貨の座を脅かす‐米中対立激化

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中国では昨秋に成立した「暗号法」が1月1日から施行されている。デジタル人民元の発行はもう秒読み段階だ。いったい、どういうことが起こるだろう。識者の意見が参考になる。前財務官でアジア開発銀行(ADB)総裁に近く就任する浅川雅嗣氏はインタビューでこう述べている。「まずデジタル人民元の当面の目的は資本規制の強化だろう。人民元の流出圧力は2014年から続いている。野放図にすると経済への打撃が大きいので、人民銀は外国為替市場への介入で、人民元の下落速度を調整しようとした。ただうまくいかず、資本流出への規制強化を図ってきた。人民元のデジタル化も、まずは人民元レートの安定管理に役立てる側面が大きいはずだ」「将来的にデジタル人民元を『一帯一路』への参加国などに広めるという構想は、中期的な絵姿として可能性はある。デジタル人民元という非常に中央集権的なガバナンスを持った通貨システムが世界に浸透してきた場合、ドル基軸通貨とぶつかることはあり得る」「自国の金融政策が国民からの信頼を完全に失っている国では、長期的に自国通貨に代わってデジタル人民元を使う国が出てくるかもしれない」(1/7 日経「逆境の資本主義」)

 

LIBRAの構想を世界の規制当局(あるいはエシュタブリッシュメント層)が「よってたかって」潰したのは、裏を返せばそれだけ潜在的な脅威が大きかったからにほかならない。法定通貨の裏付けをもったデジタル通貨は、あっというまに主権を握る可能性を秘めている。それを世界第二位の経済大国である中国が人民元でやろうというのだ。こちらはLIBRAのように「よってたかって」潰すわけにはいかない。

ドルの基軸通貨の座が危ういことは米国だって無論理解しているだろう(誰よりもわかっているのはフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOだろう)。ファーウェイ問題の比ではないはずだ。e-RMBの登場は米中対立激化の新たな火種になるかもしれない。