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恐竜を絶滅させた「小惑星衝突」そのとき、何が起きたのか?

宇宙や地底の謎も鉱物研究にお任せあれ
約6600万年前、小惑星の衝突により地球環境の大変動が起き、恐竜が絶滅したと考えられている。その衝突でできたチチュルブ・クレーターがメキシコ・ユカタン半島の地下に埋没している。

国際深海科学掘削計画(IODP)第364次研究航海「チチュルブ・クレーター掘削計画」が2016年に実施され、4〜5月に掘削された試料(コア)の基礎分析がドイツ・ブレーメン大学において9〜10月に行われた。その基礎分析に参加した富岡尚敬さんは、
コアのなかから高温・高圧でできる鉱物を見つけ出し、小惑星衝突で生じた温度・圧力を確定しようとしている。(海と地球の情報誌「Blue Earth」より作成)

宇宙への思いは幼少期から

──ご出身はどちらですか。

北海道旭川市です。家は市街地にありましたが、自然豊かな環境で育ちました。子どものころは宇宙に興味があり、『天文ガイド』を愛読して、望遠鏡をのぞきました。

富岡尚敬さん

北海道大学に進学して、天体物理学を志望しましたが、物理や数学が苦手でした。せめて宇宙からやって来る隕石の研究がしたいと、地質学鉱物学科の研究室に入りました。しかし、そこでは隕石の研究ではなく、地球のマントルにある鉱物を調べる研究を行っていました。

 

マントル深部の鉱物が地表にもたらされることはほとんどありません。そこで、マントルと同様の高温・高圧状態を再現する装置で人工的に鉱物を合成して、電子顕微鏡などを使って分析します。

 ──マントルにどんな鉱物があるのか、 よく分かっていないのですか。

概要は分かっていますが、マントルは均一ではなく、場所や深度で化学組成が異なります。たとえば、地表を覆うプレートが地球深部へ沈み込む海溝では、海水がマントルに供給されるため化学組成がほかの場所とは異なります。

また、化学組成が同じでも、温度や圧力によって鉱物の結晶構造は異なります。鉛筆の芯などに使われる黒鉛と、ダイヤモンドは、どちらも炭素からできていますが、かたさなどの物性が大きく異なります。かたいダイヤモンドは高温・高圧のマントル深部でできる高圧鉱物です。

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博士課程で「サイエンス」誌デビュー

──その後、隕石の研究も始められたのですね。

大学院で人工鉱物を合成して分析する研究を続けていましたが、その知見を天然の鉱物で検証してみたいと思うようになりました。

マントル深部の高圧鉱物は手に入りませんが、隕石のなかに、微細な高圧鉱物が見つかるケースがあるという話を聞きました。隕石のもととなる小惑星がほかの小惑星と衝突することでマントルと同様な高温・高圧状態となり、高圧鉱物ができます。

私は指導教官にお願いして、テンハム隕石を購入していただきました。握りこぶし半分ほどの大きさで5万円ほどでした。それは、1879年にオーストラリアに落下した隕石です。1960年代末から70年代末にかけて、それまで天然では見つかっていなかった高圧鉱物がテンハム隕石から発見されました。

しかし、私が大学院博士課程でテンハム隕石の分析を始めた1990年代には、隕石から新しい高圧鉱物を探す研究は長らく下火になっていました。