元経済ヤクザが総括「ゴーン氏は、もはやマフィアを超えた」

逃亡は「新展開」ではなく「帰結」
猫組長(菅原潮) プロフィール

その理由の一つが、ICPOから出された「赤色手配」である。

「赤色手配」が出ると、まともな国への入国のハードルは格段に上がる。そう言えるのは、私自身「赤色手配」をされた経験があるからだ。渡航できるのは、自動車産業など存在しない賄賂の効く貧困国に限定される。

もう一つは「アメリカ」だ。今年9月にゴーン氏はSECと100万ドルで手打ちを行っているが、弘中氏は「米国でSECと裁判で争えば、何倍もの費用がかかる」と説明した。

まずは「保釈金」から解き明かしていこう。

「保釈金」は被告の保有している財産を調査して、没収されたら逃走することができない金額を言い渡される。だが、ここに疑義がある。

19年間も日産に勤め、年収19億円とも言われるゴーン氏にとって本当に15億円が「困る」金額だったのか。どう考えてもバランスが合わない。導き出されるのは、この「15億円」の元になったのは、日本国内に保有している財産ということだ。それはゴーン氏が、海外に財産を逃避させているということでもある。

こうした時、世界で通用する最も強いマネー「ドル」で蓄えるのが、黒い国際金融に精通した者の常だ。そしてアメリカは「ドル」で悪事を働くことを絶対に許さない。
SECの認定は「結末」ではなく、「はじまり」と考えるべきだ。

逃亡を首謀したテイラー氏は、政府機関で仕事をした「アメリカを良く知る犯罪者」だ。アメリカにとって「敵」となったテイラー氏を使ったことによって、アメリカはゴーン氏の資金監視をますます強化していると考えるべきだろう。共犯者の妻でさえ国外移動が難しい状況で、どのように在外資産を守ることができるだろうか。

SECはアメリカという国の一部でしかない。ゴーン氏が海外に逃がした全資産没収のリスクは依然残っているということだ。

 

最良の就職先は「テロリスト専門の銀行家」

さらにもう一つはレバノンの国状にある。

1997年、国際手配を受けてレバノンに潜伏していた日本赤軍メンバー5人が検挙され、禁固3年の判決が確定した。出所後、4人は日本に強制送還されたが、岡本公三氏ただ一人だけ政治亡命が認められた。イスラエルと対立するレバノンが、岡本氏を反イスラエルの政治犯としたからだ。

レバノンではイスラエルへの渡航が禁止されている。ところが08年ゴーン氏は、レバノン国籍を保有しながら、ルノーの代表としてイスラエルに入国。政府要人と会談している。

石油を扱っていた私は中東社会で生きた。「イスラエル」というのは、アラブ社会では極めてデリケートな存在だ。

パスポートにイスラエルの入国スタンプがあると、他のイスラム圏の国に入国できないことは多い。だから、イスラエルに入国する時には別紙に入国印を押してもらい、再びアラブ社会に入国する時にはそれを一回剥がして審査を受けるほどだ。

過去のゴーン氏とイスラエルの関係の濃淡が明らかになっていけば、別な罪でレバノンで拘束される可能性は十分にある。

実際には多面楚歌の状況にあるゴーン氏に必要なのは、自分を守ってくれる強い「暴力」だろう。そこで私がお薦めする次の転職先は、テロリスト専門の黒い銀行家だ。

脱出前にはゴーン氏を「反日」のアイコンとして、韓国や中国の自動車メーカーで雇用するという観測もあった。レバノンでの「ゴーン節」が、どれほどメディアで賞賛されても傭兵を雇って国外脱出をする人物に経営を任せる一流企業は存在しない。

一方で、ゴーン氏が所有しているドルをテロリストは喉から手が出るほど欲しがっている。テロリストたちは、いつでもスポンサーがマネーを引き出せるよう「安全」を保障してくれるはずだ。