元経済ヤクザが総括「ゴーン氏は、もはやマフィアを超えた」

逃亡は「新展開」ではなく「帰結」
猫組長(菅原潮) プロフィール

1月7日には、森雅子法相が会見を行った。法務省がGPS機器を利用した保釈者の監視を検討することばかりか、法相が保釈を規定している刑事訴訟法の改正も視野に入れること、出国審査の厳格化も課題とした。

もちろんこれらの対応は、日本人にも行われるだろう。すなわち、ゴーン氏によって、日本国民が享受していた「自由」は、阻害されたことになる。「ゴーン事件」の最大の被害者が皆さん自身であることを自覚しなければならないと、私は考えている。

だが、極めてロジカルにゴーン氏の事件を分析してきた私だが、今回の逃亡を期に2人の「大物著名人」から名指しで批判されることとなった。ご両名への怨嗟はないが、この批判には重要な問題があると私は考えている。

 

事件の「理解不能」が擁護派を生む

大物の一人が、ゴーン事件を使って検察批判を展開していた、元検察官で現在は弁護士の郷原信郎氏だ。「『有罪率99%は誤解』との見方で『特捜事件』を論じることの“誤解“」と題された署名記事の中で郷原氏は、「検察が起訴する率は63%で、有罪件数を逮捕件数で割ると国際的な平均に近い」という主張に対して反論を試みている。「「特捜事件における有罪率」という観点が完全に欠落している」という主張だ。

百歩譲ってここまではロジカルであることまでは認めよう。だが、

「『猫組長』という、元暴力団組長という経歴からして日本の刑事司法について語る資格があるとは到底思えない人も、同様のことを言っている」

と付け加えた点は驚きだ。まさか高名な郷原先生が私を相手にするとは思いもよらなかった。ばかりか「日本の刑事司法」を語ることに「資格」がいるということを初めて知ったことは、僥倖というほかない。

2010年の大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件などにより、特捜部の「不敗神話」は崩壊した。郷原氏が主張するように「特捜部」が問題を抱えていることは、ある部分では事実だと言えるし、それを明らかにする言論には価値もある。

だがある組織が「問題を抱えている」ということは、「常にミスを犯す」こととイコールではない。「不敗」が崩れたことは、この先の「勝率ゼロ」を意味しない。

検察の問題を明らかにすることと、「ゴーン氏が100%無罪である」ことは別の問題だ。

そもそも「ゴーン氏が無罪である」という齟齬が生まれる根底には、前述したようにゴーン事件の核心が一般の日本人には理解不能な形で行われたことにあると私は考えている。こうした無知が「ゴーン氏はグレー」と判断させ、逃亡した現在でも「推定無罪なのだから人権問題だ」という誤識へと連なっているとしか思えない。

裏でも表でも国際金融の実務経験者は「SBL/C」という証券が使われた時点で、このゴーン氏が「推定有罪」であることを認識している。法律の専門家が国際金融の専門家であるとは考えにくい。

一方で郷原先生ほどの優秀な弁護士が「検察憎し」の感情に任せて私を批判したとは考えられない。「SBL/C」を含めた国際金融の仕組みを理解し、海外の法律を熟知しているからこその「無罪主張」ということなのだろう。