元経済ヤクザが総括「ゴーン氏は、もはやマフィアを超えた」

逃亡は「新展開」ではなく「帰結」
猫組長(菅原潮) プロフィール

マフィアを超える逃亡の手口

報道によれば、逃亡計画を主導したテイラー氏はアメリカ陸軍特殊部隊「グリーン・ベレー」を4年勤め退役。82年にレバノンで軍事訓練を手伝い、85年にレバノン人の妻と結婚する。

冷戦時のアメリカのインテリジェンス機関では、仮想敵国の言語「ロシア語」を話せることが重要視されていた。しかし91年のソ連崩壊から、湾岸戦争を経てテロとの戦いに至るまで「アラビア語」へとウエイトがシフトする。

テイラー氏は、アメリカ人でありながら「アラビア語」を使える先駆者の一人だ。

こうした経歴から、テイラー氏は91年にアメリカ捜査当局の要請によりレバノンで3トンのハシシ(樹脂大麻)の押収を成功させた。「歴史上最も重要なDEA(アメリカ麻薬取締局)活動の1つの重要なプレーヤー」と称される一方で、00年以降、契約詐欺と資金洗浄の罪を含めて複数の前科を重ねた。テイラー氏は政府機関の仕事を通じて犯罪組織と関わるうちに悪の世界に染まったということがわかるだろう。

現在では「人質解放」を得意とするPMC(民間警備会社)を経営している。

だがこの「警備会社」は日本のそれとは違う。アメリカでは退役した特殊部隊の軍人がPMCを作り、元兵士を募って「戦争」を稼ぎの場としている。

テイラー氏は「傭兵」と呼ぶべき立場の人間だ。

関西空港の出国審査に違和感を覚える人も多いと思うが、日本中からただ一点の穴を見つけるほどテイラー氏の組織が優れていたということだ。最高度の技術を持った「傭兵」を使って不法に国外脱出をすることなど、世界でも極めて暴力性の強い南米の麻薬カルテルなど、テロ組織に近い犯罪組織しか行わない。

前述の著書中ではゴーン氏を「黒い経団連会長」と呼んだが、訂正しなければならない。今回の一件でゴーン氏はマフィアを超えた。

 

毀損された近代国家の根幹

1月8日には、ゴーン氏がベイルートで会見を開き、日本の司法制度を、

「フェアではない、根本的な市民の自由、そして国際的な規範に違反する」

と主張する。だが、この発言にはゴーン氏の「黒い倫理観」が凝縮していると私は考えている。

多くの近代国家は「暴力」ではなく「法」によって統治されている。その根幹にあるのが「自然権」だ。「自然権」とは、法が社会に生まれる以前から人間が持つ、生命、自由、財産、健康などについての権利で、人権はその総称といえるだろう。

ナチス政権下のドイツや旧ソ連、北朝鮮などの特殊な国家を除いて、自然権は「法」によって保障されている。「根本的な市民の自由」を訴えながら「法」を破ったということは、「日本の司法制度」の毀損だ。

そのことによって日本国民ばかりか、特に「外国籍の在留者」の「生命、自由、財産、健康」を脅かしている。今後は「次のゴーン」を生まないために、外国籍の被告に対する保釈条件は厳しくなるばかりか、保釈中の監視も人権を毀損するレベルのものになるだろう。