2020.01.16
# 中国 # 台湾

「若者の中国離れ」が明らかに…台湾の総統選挙を現代史から読み解く

エリートと庶民、北と南…様々な対立
新井 一二三 プロフィール

中国寄りになるメディアと政権

それが変化したのは、一つには中国寄り資本が台湾のメディアを集中的に買収した結果である。馬英九政権時代に、国民党寄りで有名だった日刊紙中国時報が、中国で煎餅工場を大々的に展開する企業に購入された件を皮切りに、テレビ局や雑誌も、一つ一つ買収されていった。

町の食堂などで流されているテレビ番組は、ことごとく中国寄りの発言を流すものとなり、地方に住む年配の視聴者らの考えに大きく影響を与えたのである。

フェイクニュースという言葉は、アメリカでトランプ政権が成立した前後に急速に広まったが、台湾でも時を同じくして事実とは異なる内容が、ニュースとして報道されるようになった。SNSなどネット上で流れる情報については、言うまでもない。

〔PHOTO〕iStock
 

だが同時に、台湾の選挙で中国寄りの候補者が選ばれるようになったのは、フェイクニュースだけが原因ではない。台湾出身の芸能人が中華民国の国旗をテレビ番組で振っただけで公開謝罪に追い込まれたり、はっきり中国に批判的と取られる発言をした俳優に至っては中国メディアだけでなく、香港や台湾でも仕事を干されている。中国寄りのデモや集会に参加して日当を受け取る庶民がいると同時に、中国の大学に客員で招かれて多額の報酬を支払われる大学教授もいる。

退任間近だった馬英九が、中国の習近平国家主席とシンガポールで会見した際、明かに習近平より一角落ちの立場を嬉々として受け入れた映像が雄弁に物語っていたのは、台湾海峡をはさんで国民党政権と共産党政権が対峙した時代は終わり、国民党は台湾における中国共産党の代理人として生きることを選んだという事実だった。

関連記事