2020.01.16
# 中国 # 台湾

「若者の中国離れ」が明らかに…台湾の総統選挙を現代史から読み解く

エリートと庶民、北と南…様々な対立
新井 一二三 プロフィール

台湾人意識の覚醒

第二次大戦の終結から75年を経る現在、台湾本省人、外省人といった区別はもう大きな意味を持たないという人もいる。実際、通婚が進んでいるために、純粋な台湾本省人や外省人などほぼいないという言い方もできるだろう。

しかし、2020年の総統選に当たり、国民党候補として手をあげたのは全員が外省人家庭の出身者だったし、民進党側は全て台湾本省人だった。そして両者間の最も本質的な隔たりは、自分を含めた台湾人を中国人の一部だと感じるかどうかにある。

台湾本省人は半世紀に及んだ日本統治の間、日本語による教育を受けて徐々に日本人としてのアイデンティティを獲得し、太平洋戦争中には日本軍の一員として戦地に赴いた人も20万に上った。ところが、日本によるポツダム宣言の受諾は、日清戦争以降に得た領土を放棄する条項をカイロ宣言より引き継いだため、1945年8月を境にして、台湾人は中華民国の国民となった。そして、1949年から38年間に及んだ戒厳令下では、中国人としての意識を植え付ける教育が徹底されたのである。

 

自らを「台湾人」と考える意識の覚醒あるいは誕生は、1990年代の民主化以降の出来事である。民主化と同時に進行したので、台湾人意識の重要な内容として、民主と自由が含まれることとなった。そして、その後20年あまり、台湾人意識は徐々に深化していったのである。

一方、中国に対しては、別の国であると感じる度合いが高まっていった。そもそも国民党による戒厳令時代にも、共産党政権の中国に対しては「共匪」と呼んで敵意を醸成する教育を行なったのだ。親が中国出身の外省人で、民進党的な台湾人意識に強い違和感を示す人であっても、故郷の山河や中国5000年の歴史に対してはともかく、共産党政権に親近感を覚える台湾人は、滅多にいなかったのが実情である。ごく最近までは。

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