人生に詰んだ元アイドルがどうしても伝えたい「アラサー女子の叫び」

赤の他人のおっさんと住んでみた結果…

今日も、我が家のインターフォンが鳴る。

「笹本さんの奥様ですか? ご主人宛てにお荷物です」

宅配業者の男性はごく自然に私に問いかけ、こちらも素知らぬ顔で受け答える。

「はい。お世話さまです」

シレッと荷物を預かりサインするが、実のところ私は、笹本という人物の妻ではない。

日中、仕事で不在の彼に代わって“妻”になりすまし、荷物を受け取っているだけである。

私は30歳独身フリーランスライターで、笹本という人物は某企業に務める58歳の会社員だ。

恋人でもなければ家族でもない我々は、しかし、ひょんなことから共に暮らしている。

私と彼あいだには、一切の肉体関係も恋愛感情もない。

あるのは、信頼だけだ。

 

駅のホームで足が一歩も動かなくなった

本題に入る前に、少し私の背景について説明しておきたい。

私は1年半ほど前、28歳のときに記者として務めていた会社を辞めた。

ある日、得意先に向かう途中でパニック障害に似た症状に陥り、駅のホームで足が一歩も動かなくなったことが原因だ。

やむなく心療内科に通いはじめる中、思い当たる2つのことがあった。

1つめは、常日頃から周囲に「仕事ができる女」だと思われたい願望が強すぎて、完全にキャパシティを越えた作業量を自分自身に課していたということ。

2つめは、「仕事も恋も順調」という理想の人生を歩みたい一心で婚活に励み、狂ったように“ハイスペ男性とのデート”に没頭していたことである。

毎日猛烈に仕事をこなし、翌日は夜遅くまで合コンに励むのだから、睡眠をとる時間は当然ない。

冷静に考えれば、体調を壊さないほうが不思議であった。