Photo by iStock

トランプは中東でオバマが始めたゲームを続けているだけだ

地政学は米国の愚行の理由を知っている
米国とイランの関係が急速に緊張を増している。発端となったイランのソレイマニ司令官殺害は、米国大使館攻撃計画に対する自衛措置だとトランプ大統領は主張したが、国務長官と国防長官は具体的脅威の事実を示せていない。イラクやリビア、シリアで繰り返されてきた、合理的証拠なき軍事行動と見られても仕方ない状況だ。
中東におけるアメリカのこうした行動にはどんな理由があるのか。地政学で考えるとはっきり見えてくるものがある。欧州合同軍の治安部隊長官を務め、地政学・国際戦略の専門家でもあるペトロ・バーニョスの新刊『国際社会を支配する地政学の思考法』からご紹介しよう。

あえて平和にはしない

時代にかかわりなく、ときの権力者がずっと意図してきたものは、利害関係のある地域における各勢力が均衡するよう強制し、これを維持することである。各敵対者の力が横並びなら、傑出した力を持つ自国が全体を支配できるからだ。

現在の中東では、オバマ政権が便宜を図ったことによって地域の覇権を握っているイランが、イラク、シリア、レバノンとイエメンには直接的な影響力を、バーレーンには潜在的影響力を行使している。このことによって、ペルシャ湾からトルコに至る、大半がスンニ派の周辺国およびイスラエルが懸念を抱くのは当然であろう。トランプ政権は新たな権力の再均衡の道を探ろうとする可能性が非常に高いが、それを平和的に達成するのは難しい。

超大国の動きを見ていると、トランプはおそらく、実際にはオバマが始めたゲームを続けているにすぎないといえるだろう。つまり、中東でイランとシーア派にてこ入れした米国は、現在では彼らと敵対する動きを見せている。そうして、この地域を絶え間ない対立状態においているわけだ。

 

アラブおよびイスラム世界を分裂させ、地域の石油、または輸送上の重要地点を管理できなくするというのは、1世紀以上にわたりこの地域を操っている西側の大国(フランス、英国、米国)が適用した地政戦略の前提の一つだった。したがってジョージ・フリードマンが指摘したように、米国政府がすべきことは、世界とすべての地域の力の均衡によって、敵となりうる国々にエネルギーを消耗させ、できるだけ米国への脅威になりにくくさせることだろう。

イスラム世界を統合できないカオス状態のままにしておき、イスラム教徒同士で戦っているかぎり、米国は戦争に勝てるからだ。これは1950年代から1960年代にかけて自国の安全を脅かす統一ヨーロッパの創設を妨害した英国の戦略にどこか似ている。英国にとっては、旧大陸が軍事的にフランスとドイツに支配されるのが何より耐えられないことなのだ。