家賃滞納という貧困』という書籍の著者である司法書士の太田垣章子さんは、多くの家賃滞納に陥った人たちにも会ってきた。昨今増えてきたのが「高齢者の家賃滞納」だという。実例にふれるにつれ、高齢になってからの「終活」のみならず、「住活」が大切だということを実感してきた。その実体験と対策を1冊にまとめたのが『老後に住める家がない!』(ポプラ新書)だ。「住む場所」は人の生活の基盤となる。まさに「終活」の中心にもなるのだ。

だれもがいつかはひとりになる可能性が高い時代、高齢者は賃貸ができないとか、終活を早めにと言われても、いったいどうしたらいいのだろうか。『老後に住める家がない!』に掲載された太田垣章子さんと、賃貸管理業務に25年あまり携わっている熊切伸英さんの対談から、住活のヒントとなる部分を抜粋紹介する。


熊切伸英(くまきり・のぶひで)
電鉄系不動産会社を皮切りに賃貸管理業務に25年余り従事。現在、埼玉県久喜市ベルデホーム株式会社で統括部長を務めながら、不動産トラブル・資産活用・売買・相続対策などの実務とセミナー講師としても活躍中。米国不動産経営管理士(CPM®)、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士など、多数の不動産系資格を取得。2018年に上梓した『帰ってきた助けてクマさん!賃貸トラブル即応マニュアル』(住宅新報社)は、クレーム対応のバイブルとして知られる。

高齢者に部屋を貸すことに
メリットもある

太田垣 高齢者には積極的に部屋を貸したくないという家主さんが多いという現実は、残念ながら否定できません。ただ、その一方で、一度入居すると比較的長く住んでくださるとか、高齢者に部屋を貸すことのメリットもありますよね。

熊切 そうなんですよ。アパートの1階はどうしても空室になりやすいのですが、高齢者の方は足腰に不安がある分、むしろ1階を好まれるので、そこのマッチングはいいんです。普通なら駅から遠い物件も敬遠されがちなのですが、通勤や通学の必要がない高齢者は駅近にあまりこだわらない人が多いというのも、家を貸す側にとってはありがたい話ですよね。

太田垣 家主さんにとってはずっと空室が続くことの方が最大のリスクですものね。

熊切 ええ。それに孤独死のリスクは、高齢になるほど高いというわけではないと僕は思うんですよ。

太田垣 確かに20代の人の孤独死だってありますからね。

熊切 亡くなっていることに気づかれないのはなぜなのかと言えば、結局のところ、社会との接点がないからですよね。65歳以上の単身者の場合は、民生委員の人が巡回して状況確認を行っている地域も多いですから、むしろ、年齢的には若くはないけど、高齢者とは言えないくらいの微妙な年齢の人の方が社会の盲点になる危険性は高いような気はします。

地域のコミュニティで顔を合わせるだけでも、しばらく顔をみないことなどにも気づいてもらえる。「地域」の力は大きい Photo by iStock

太田垣 確かにそれはあるかもしれませんね。

熊切 孤独死を防ぐという意味では安否確認用に人の動きを察知するセンサーの進化、現実に孤独死されてしまった場合の対策としては、原状回復費用を補償する保険が増えてきていることも良い流れだと自分的には思っています。

太田垣 ただ、センサーだと見張られてる感があって嫌だという入居者もいるんですよね。点灯したかどうかで安否確認ができる電球の方が抵抗は少ないかもしれません。コストも安くて済みますし。

熊切 個人情報を守りつつ見守れるような、優れた商品は今後もどんどん開発されていくと思いますよ。そういうものを設置するのが当たり前になれば、高齢者に限らず、孤独死のリスクは下げられますよね。