空港で出会った感動の光景
これこそ「答え」に縛られている日本人に必要なのではないか。端的に言えば、「人はなぜ生きるのか」「どうして自分は生まれてきたのか」「どんな人生を送りたいのか」ということだ。

しっかり内省ができていないから、「答え」に振り回される。他にすがるものがなくなる。これは私自身の職業が幸運だったから気づけた、ということもあるが、何より知るべきは「いかに自分が狭い世界で生きているか」である。
私はリクルートで人材採用関連の広告を作っていたが、改めて知ったのは「世の中には驚くほどの数の会社があり、驚くほどの数の仕事がある」ということだった。まったく無名の会社にとても充実した仕事人生を送っている人たちがたくさんいる。
意識して街を歩くだけでも、素敵な仕事にたくさん出会える。今も印象に残っているのは、ハワイからの帰国時、成田空港で駐車場の送迎車を待っているときに見た光景だ。屋内のベンチの隅っこに自動販売機が置かれていた。
そこに、飲み物を補充するスタッフがやってきた。カギを入れてドアを開け、ドリンクを次々に補充していく。だが20代後半とおぼしき彼の仕事は、それでは終わらなかった。
ドアを閉め、カギをしめると、彼はバッグから布を取り出して、黙々と自動販売機を磨き始めたのである。日本の自動販売機はどこに行ってもピカピカだが、なるほど、こうやってきれいに拭いてくれていたのだと知った。