2020年、この「不安定な株式相場」を見抜くヒント

天気も相場も「カオスの論理」で動く?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

最近オンライントレードの手数料完全無料化が話題になっている。

米国ではロビンフッドというスマホ証券のベンチャー企業が手数料無料化で旋風を巻き起こし、チャールズ・シュワブなどの大手が追随を余儀なくされた。

日本でもSBI証券などが手数料無料化の方針を打ち出している。

 

喜んでいる個人投資家も多いと思うが、ちょっと待った。タダほど怖いものはない。なぜ証券会社が「タダ」でもやっていけるのか、考えた方が良い。

一つは、手数料無料で勧誘しておいて個人投資家を信用取引に誘い込み、そこで金利収入を上げるというのが証券会社の目論見だ。

だがもう一つは、証券会社や証券取引所が投資家の売り買い注文(オーダーフロー)情報を、ミリセカンド(千分の一秒)やマイクロセカンド(百万分の一秒)単位のコンピュータ取引、HFT(High Frequency Trading)を行うヘッジファンド(*)に売っているケースもあるのだ。
*参考記事:「人間VS人工知能」投資の世界ではトンでもないことになっていた

これは、マイケル・ルイスの「フラッシュ・ボーイズ」に描かれた世界だが、ロビンフッドは売上の半分近くをシタデルやツー・シグマなどの大手HFTヘッジファンドへの情報提供で稼いでいる。

例えばある株に300円で大きな買い注文が入りそれが間もなく株価を300.01円に押し上げると見通すことができれば、超高速回線を有するヘッジファンドはマイクロセカンドの差で市場のトレードを出し抜いて300円でそれを買い、300.01円で後から来た買い手に買わせることが出来る。

つまりHFTファンド側から見れば、その株が売りなのか買いなのか、100万分の数秒先の「未来」が見えるのだ。

顧客の注文情報の販売(Payment for order flow)自体は合法だが、HFTファンドが一般投資家をいわば食いものにしてその取引コストを上げているわけだから、市場の公平性の観点から大きな批判も上がり、集団訴訟も起きている。

こうした世の批判を受けて証券取引所の中には近年、「スピードバンプ」と呼ばれる取引速度の制限を設けて、他の投資家をHFTから保護する動きが広まっている。

ただし、近年は取引所を通さない「ダークプール」と呼ばれる証券会社間の私設市場での取引量が増えており、こうした規制がどこまで有効なのかはまだよく分からない。