「イランと中国の密接な関係」イラン危機は、米中覇権戦争の一環だ

「イランと北朝鮮」という中国のカード
峯村 健司 プロフィール

「北朝鮮はレガシーにならない」米国の事情

トランプ大統領は、2016年11月の大統領選勝利の日からいまに至るまで、再選に向けた選挙運動を続けていると筆者は見ている。

ふつう米国の大統領というのは、選挙中の公約と就任後の政策が食い違うもので、それゆえ批判も浴びる。ところがトランプ大統領は、就任前に掲げた公約をほぼ全て実行に移しており、それが支持層を引きつけている面がある。

 

もちろん、公約そのものの実現性は薄いので、メキシコ国境に築くとした「壁」の建設は結局止まり、外交はハチャメチャになった。普通の政権なら、現実に合わせて政策を修正するところだ。しかしトランプ大統領にとっては、ド派手な政策そのものが再選に向けた選挙運動、アピールの一環なので、省みることがない。反省しないから、ますますうまくいかない……というスパイラルに陥っている。

以前は政権内に、ジェームズ・マティス前国防長官やハーバート・マクマスター元大統領補佐官など軍出身のプロフェッショナルなブレーンがおり、歯止めをかけていたが、彼ら良識派はひとり残らずホワイトハウスを去った。いまや、トランプ大統領の「イエスマン」ばかりで、すべての決断が大統領の気分次第、となっている。

さらにここへきて、弾劾というファクターも加わった。トランプ大統領は、再選が叶わなければ罪に問われかねない「背水の陣」におかれているのだ。今年11月の大統領選まで、米国の内政と外交は、これまでに輪をかけて「異常な状況」が続くことを覚悟しなければならない。

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当初報じられたところによると、トランプ大統領は、軍幹部が「最も極端な選択肢」として提示した「ソレイマニ司令官の殺害」を選んだという。この決断には、先にも少し触れたように、昨年から北朝鮮問題が行き詰まりを見せていることと、それに対する大統領の焦りも影響した可能性が否定できない。

本来は北朝鮮問題の解決が、トランプ政権の「レガシー」となるはずだった。しかし、昨秋に筆者がワシントンを訪れたとき、米政府高官らは口々に「ホワイトハウス内では北朝鮮問題はタブーだ」と声を潜めた。北朝鮮との交渉がいまや実質的に破綻した状況にあり、レガシーにできなくなったという認識は政権内で固まっているのだ。