「イランと中国の密接な関係」イラン危機は、米中覇権戦争の一環だ

「イランと北朝鮮」という中国のカード
峯村 健司 プロフィール

北朝鮮との類似点

こうした中国とイランの関係は、中国と北朝鮮の関係と相似形である。

トランプ政権下の2016年以降、米国は北朝鮮の後ろ盾である中国と協調して北朝鮮を管理することを企図し、その交渉の武器として対中経済制裁・貿易規制を持ち出した。

 

中国の戦略の基本は「非対称戦」だ。経済でやられたら、別の手段でやり返す。その逆も然り。習近平主席は米中対立が激化する中、北朝鮮への経済支援を厚くし、金正恩朝鮮労働党委員長を頻繁に北京へ呼びつけてテコ入れを図った。「いざという時は助けてやる。カネもたんまり出す。トランプが言うことなんか信じるなよ」と耳元で囁いたのだ。

安全保障と経済の「合わせ技」のディールは、トランプ大統領の得意技である。中国はそれを米国に「やり返した」とも言える。いっときトランプ大統領との急接近を見せた金氏の姿勢も、再び強硬に戻ってゆき、昨年2月のハノイでの首脳会談以後、米朝関係は事実上破綻した。

Photo by gettyimages

結局のところ、イランと北朝鮮は、中国のカネとパワーに頼らざるを得ない状況となっている。ブッシュ政権で米国はイランと北朝鮮を「悪の枢軸」と名指ししたが、さらに大きな「米中覇権戦争」というゲームの潮流を踏まえていえば、この両国は中国の掌中にあるカード、というわけだ。

ただし、今回の司令官殺害に端を発する一連の緊張で、トランプ大統領自身がこうしたグローバル秩序を十分に認識したうえで駆け引きに出たのかといえば、疑わしいと言わざるを得ない。今、トランプ氏の眼中にあるのは自らの選挙のことだけだからだ。