「イランと中国の密接な関係」イラン危機は、米中覇権戦争の一環だ

「イランと北朝鮮」という中国のカード
峯村 健司 プロフィール

イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官を、米軍がバグダッドで殺害したことについての中国政府の反応もこれまでにないものだった。

1月6日、中国外務省報道官は「米国による軍事的暴挙は地域の緊張と混乱を加速させている。我々は米国に対して武力の乱用をしないことを求める」と米国を批判した上で、各国に自制を呼びかけた。

内政不干渉を外交原則にしている中国政府は、他国の行動については慎重にコメントすることが一般的だ。今回の強い対米批判には、深刻化する米中対立に強硬姿勢で臨む習近平指導部の姿勢が反映されている。

 

イランは中国の「カード」である

かねてから、中国とイランは関係が深い。中国にとって、米国と対峙するうえで重要なふたつのカード、それが北朝鮮とイランなのだ。アジアでは北朝鮮、中東ではイラン──ユーラシア大陸の東端と西端で、同じ構図がある。

2010年4月、当時の胡錦濤・中国国家主席が訪米し、オバマ大統領と会談した。このとき北京の中国総局にいた筆者は、訪米に同行し記事を書いたが、そのときイランが北朝鮮同様、米中関係の重要な「焦点」であることに気づいた。

胡主席とオバマ大統領は、この会談で「ビッグ・ディール」を行った。米国は中国に対し、イランの核問題について国連安全保障理事会で拒否権を行使しないことを求め、その見返りとして米側は対中批判を弱めることを約束。中国はこれを受け入れた。

1979年のイラン革命ののち、中国は兵器供与や原油取引を通してイランに対する影響力を強めてきた。さらには原子力発電・ウラン濃縮施設の技術だけでなく、ウランそのものまで提供してきた疑いがもたれている。

この数十年、イランの背後には常に中国の影があった。中国にとってイランは友好国であると同時に、米国とのディールにおける「手札」であり続けているのだ。

両国の関係の深さを示す事件は、近年にも起きている。2018年12月、華為技術(ファーウェイ)創業者の娘で副社長・CFOの孟晩舟氏が、米政府の要請によりカナダ・バンクーバーで逮捕された。容疑は対イラン経済制裁違反。このとき、合わせて華為技術の事実上のイラン関連会社であるスカイコム社も捜査を受け、起訴されている。

華為技術CFOの孟晩舟氏(Photo by gettyimages)