イラン・米国衝突で「ソレイマニ英雄論」を唱えた日本メディアの限界

個人の「過大評価」で国際情勢は読めない
松岡 久蔵 プロフィール

普通は、客観的報道を任じるのならば、彼がトップを務める組織がどのような活動をしていたのか、という部分も詳しく報じるべきでしょう。そうした経緯を省いてしまうと、なぜ米国が大きなリスクを抱えてまで彼を殺害しなければならなかったのかがわからない。

革命防衛隊は、イラン政府軍とは別に国内外での防諜・工作活動にあたる最高指導者ハメネイ師直属の武装勢力です。ソレイマニ氏は、イラン国外で親シーア派勢力を支援したり、破壊工作をしかけたりする『外征部隊』のトップでした。

彼はイラン核合意をめぐって米国が経済制裁をかけて以降、米国側へのテロ活動を中東全域で指揮していたとみられます。昨年12月31日に発生したイラク・バクダッドの米国大使館襲撃事件もその一つです。日本ではこうした背景の解説が、どの報道機関でも基本的に浅かったか、遅かった。

総じていえば、日本のメディアは明言こそしないものの『反米』バイアスに支配されていて、コメントを寄せる大学教員など専門家の多くも見方がナイーブだと感じました」

 

海外での情報収集能力の弱さ

今回、新聞のみならず、NHKなどテレビでも、上記のような似通った論調の報道が目立った。その理由について、海外支局駐在経験のある全国紙記者はこう解説する。

「情けない話ですが、記者クラブメディアの仕事のやり方は、海外でも変わらないとしか言いようがありません。つまり現地にある日本の当局、大使館や外務省などの『お上』からもらった情報が正しく、現地の当局者や住民からの情報は『誤報のリスクがあり、信頼できない』という意識が抜けきらないのです。

今回の報道の内容が『ソレイマニはイランの英雄』というトーンで一致していたのも、駐在記者が日本人官僚から背景レクを受けたのが明らかで、そうでなければ米国側からみた分析も記事に盛り込まれたはずです。