今までの皆さんの外国語の学習は最初から与えられたテキスト、参考書ありきでした。
与えられた外国語のテキストの単語、文法を無造作に頭に入れて、外国語の文章を読んで、「はいおしまい」でした。そこにはあなたの意思は何もありませんでした。
これからは、日本語を基軸にまず話したい(アウトプットしたい)ことを決めて、それを外国語に置き換えるために外国語をインプットするのだという発想に転換してください。
今日からテキストは、あなたが話したい内容を外国語に置き換えるための材料箱と考え、選んでください。発想を180度転換していきましょう。
「ネイティブ脳」なんて必要ない
このような私の考え方に対し、「日本語脳」ではなく「ネイティブ脳」、すなわち外国語を話すには外国語で考える、外国語は外国語で理解しなければならない、という考え方もあります。
この「ネイティブ脳」作りは、長く日本の外国語教育の目標になってきました。
その背景には、外国語をいちいち日本語に訳すから時間がかかって外国語が話せない、だから外国語は外国語で考えるしかないという「神話」めいたものがあります。
外国人の有識者が、外国語は外国語で考えるべきと主張していることも一因かもしれません。
たしかに、この考え方は、その人の母語が決まると言われている 12歳ごろまでならトライする価値があるかもしれません。
しかし、母語が日本語に決まった後の日本人が、なぜ、わざわざ母語を変えようとするようなやり方を選ぶ必要があるのでしょうか。
それは、日本人が外国語というものを難しく考え過ぎているからだと思います。
私は、皆さんが「ネイティブ脳」作りに苦労して、結局外国語ができないという状況を放っておくことはできません。
私は 24歳からアラビア語を始め、4年8ヵ月で外交交渉の通訳まで務めることができました。
アラビア語の「ネイティブ脳」があろうはずもありません。
その代わり、日本語からアラビア語への「置き換え」、「日本語脳」の強化の訓練を「徹底的」にやりました。
具体的な勉強法は『総理通訳の外国語勉強法』の中で説明していますが、これこそが、日本人が外国語を習得する「最短の道」だと私は思います。
これは、英語をやり直したい方にとっても同様です。
ですので、皆さん、「ネイティブ脳」を作るという無謀な努力をする時間があったら、その分、「日本語脳」を鍛えることに集中してください。