なぜ離婚するのか。なぜ離婚しなければならないのか。「離婚」という言葉はネガティブに使われることが多い。しかし、人生は一度きり。誰もが笑顔で生きることができるための離婚というのもありうるのではないだろうか。多くの離婚経験者の取材を続けている上條まゆみさんの連載「子どものいる離婚」、今回取材に応じてくれた誠子さんの離婚を聞くと、「新しい家族のありかた」が見えてくる。

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子どもが20歳になったときの離婚

高梨誠子さん(仮名・61歳)が20数年連れ添った元夫と別れたのは、いまから13年前、48歳の春。離婚を考え始めてからおよそ10年、着々と準備を重ね、下の息子が二十歳になるのを待っての離婚だった。「親権とかそういうややこしいことで揉めたくなかったんです」

元夫は、浮気もギャンブルも暴力もなし。東証一部上場企業に勤めており、穏やかな人柄で、周囲の人望も厚かった。夫婦仲も取り立てて悪くはなく、結婚生活に大きな不満はなかった。――それなのになぜ、誠子さんは離婚したのか。

「理由で大きいのは、親の介護。私、妹と二人姉妹なんです。妹は結婚してお相手の実家近くに住んでいて、親のことはずっとノータッチ。とすると、私がやるしかないじゃないですか。でも私は長男の嫁で、こちらの介護も期待されていた。そのしがらみから逃れて、心おきなく自分の親の面倒をみるには、籍を抜くしかないな、って思ったんですよね」

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離婚を申し出たとき、元夫は驚いて「何も別れる必要はないんじゃないか」と言った。当時、誠子さん夫婦は東京郊外、誠子さんの両親は宮崎県に住んでいたが、誠子さんは度々、両親親の様子を見に宮崎まで出向いており、元夫がそれに反対したことはなかった。それどころか飛行機代まで出して、快く送り出してくれていた。そもそも両親は高齢で弱ってはいたが、要介護状態だったわけでもない。元夫の言う通り、何も別れる必要などなかったのだ。にもかかわらず、誠子さんは離婚の意思を貫いた。