ネットと整形外科医、どちらが信用できる?

「腰痛先生」に聞きました
今やネットで何でも調べられる時代。腰痛や肩こりに代表される「運動器の痛み」についても、医者に行く前にまずネットで検索するのが当たり前です。ネットで調べれば自分の痛みのだいたいの原因がわかり、どんな治療がいいのか、あるいはどんな医者を選んだらいいのか、あらゆることが分かるといっても過言ではありません

ところがちょっとご用心。ネットにはいろいろな情報が乱れ飛んでおり、まちがった病名を提示されたり、「一生治らない」とか「体質が悪い」などと決めつけをされた上、「この治療法なら必ず治ります」などと根拠のない独善的な治療を紹介するサイトに誘導されることすらあるのです。

ネットに書いてあることをうのみにして医者を受診し、医者にネットと違うことを言われ、すっかり医者を信用できなくなったりすることもあります。さて、ネットが正しいのか、医者が正しいのか? ネット時代、どうするのが一番良いのでしょうか? 『腰痛は歩いて治す』(講談社現代新書)の著者、谷川浩隆氏が解説します。

ネットで症状を調べてくる患者さんが増えている

私の診察室に30 代の男性の患者さんが診察室に入ってきてこう言いました。

「1週間前から腰痛があります。 3日前から右の太ももの裏がしびれてきました。ネットで調べてみたら坐骨神経痛の症状にそっくりです。坐骨神経痛の原因として腰椎椎間板ヘルニアがあると書いてありました。腰椎椎間板ヘルニアかどうか調べるには MRI が必要と書いてあったので検査をお願いします。それから、痛みがそれほど強くなければ鎮痛薬は無理して飲まなくていいと書いてありましたが、足にシビレがあれば神経障害性疼痛治療薬がよく効くということも書いてありました。どうでしょうか ? 」

つらい腰痛もネットで解決!?(photo by iStock)


この程度を調べてくる患者さんは、最近むしろふつうです。世はインターネット時代。ネットでなんでも調べられます。医療の分野でいえば、自分の症状をネットで検索することによって、診断、治療法は、研修医向けの医学書レベルならすぐ凌駕できるでしょう。

 

中には、患者さんが「ネットで調べたら、たぶん〇〇症だと思います」などと言うと、へそを曲げる医者もいるようです。私は自分で診察をしたうえで、患者さんの調べてきたことが的を射ていれば、その通りの治療を行って差し支えないと思っています。「なるほど、それは確かにいい案ですね」と感心してしまうことすらあります。

患者さんによっては最初のうち遠慮していて、あるいは医者の実力を試すつもりなのか、インターネットで調べたことをこちらから聞くまで自分からは話さないこともあります。それを察した時は「ネットで自分の症状を調べてみましたか?」と水を向けることもあります。するとお話が始まる患者さんもいます。

患者さんが、自分のからだの症状を懸命になって調べた成果は、医者の生半可な知識に勝ることすらあるのです。このようなことをしっかり話せることが、ネット時代の医者・患者関係といえるでしょう。

「目からウロコ」の情報は大体デタラメ

ただし、ちょっと気をつけなければいけないこともあります。インターネットの情報には、しっかりした医学知識に裏づけられたものもありますが、根拠のない思い込みやエセ医学といわれるもの、トンデモものまで玉石混交の多くの記事があります

いくつもの医者で診てもらって問題なしといわれているにもかかわらず、その後、 とうとう怪しげな治療を受けてしまうこともあります。医療によって引き起こされる病気を「医原病」といいます。もし、この指の腫れが治療の必要のないものであった としたら、これは医原病ならぬ「ネット原病」といえるでしょう。


インターネット上には腰痛ひとつとっても多くの治療法がみられます。体操やストレッチなどから、物理療法、運動療法、ブロック療法などがあります。健康食品やサプリを掲げてあるサイトにいたっては数えきれません。これらの中からどれが本当なのか、どれがからだに有害なものかを判断していかなければなりません。