Suicaはなぜ世界標準にならなかった?もったいない日本の技術力

「海外で勝てない技術」からは離れよう
山本 康正(文責 現代新書編集部)

職人魂は立派だし、心から尊敬に値するが、テクノロジーは正しい方向に向かわなければもったいない。日本人は、往々にして「高性能なものほど必ず世界に広まっていく」という思考に陥りやすい。3Dテレビもそうだったが、「こんなにすごいテクノロジーが開発できたから、それをアピールしたい」というだけでは世界に通用しないのだ。テクノロジー偏重で市場のニーズを無視する姿勢は危ない。QRコードも日本で開発されながら先にビジネスとして広く普及したのは中国だった。

日本のGDPは世界第3位だが、世界に占めるGDPの割合はわずかで、2020年に5.3%という予測が出ている。これから人口が減少することもあり、日本の市場は小さくなる。世界には日本と異なる大きなマーケットがあることを認識し、そこでもシェアを目指すべきだと思う。日本が日本独自のテクノロジーに固執してきたことは、グローバルな競争から置き去りにされる原因の1つになっている。

 

「便利すぎる」ATM

ガラパゴス化するものは、基本的には衰退する。日本でしか受け入れられていないユニークな製品は、結局世界のスタンダードを取れずに衰退し、その後盛り返す可能性も低い。いずれかのタイミングで黒船がやって来て、根こそぎ駆逐されるのは目に見えている。日本でしか流行していないものに対する危機感、鋭敏さは持っていたほうがいい。

このような歴史をこれ以上繰り返していいのだろうか。

日本の銀行は顧客の利便性を徹底的に高めるために各行がこぞってATMをきめ細かく設置した。手軽に現金を手元に用意できる社会を実現した結果だが、かえってキャッシュレスが進んでいない。便利すぎたため、そこから抜け出せずにキャッシュレス後進国になってしまった。

2019年の消費税アップとともに、盛んに電子マネーのキャンペーンを行っているが、世界がキャッシュレス比率50%から60%をうかがっている時代に、日本はまだ20%以下である。

便利すぎるATMがキャッシュレス化を阻害した(photo by gettyimages)

世界を知り、未来を読み、失敗には寛容に

テクノロジーは進化し続ける。だから、進化するものと思って設計すべきだ。

そのためには、次にどのようなテクノロジーが覇権を取るかを知っておく必要がある。先取りの情報を常に持ち、計画性を持ってコントロールしないと乗り遅れる。だからこそ、誰よりも早く世界最先端の情報をつかみ、そのテクノロジーを使ったビジネスの開発をしていかなければならない。

もちろん、すべてを自力でできたほうが成功したときのリターンは大きいが、できなければその能力を持った企業と組むことを優先的に考えるべきだと思う。もはや、日本だけでいい、世界の状況など知らなくていいなどという甘い考えは捨てねばならない。

10年後の世界、20年後の世界はこうなっていると、自分の言葉で語れる人がもっと出てこないと、日本のテクノロジービジネスは危うい。困難や失敗はある。だが、テクノロジーの進化とはそんなものだ。野球のバッターのように、3割当たれば御の字だという考えでいい。失敗を寛容できるチャレンジ精神、ハングリーさが求められている。

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