トランプ大統領にイラン攻撃を決断させた「オバマ」という固有名詞

俄かに信じ難い話だが、事実である
歳川 隆雄 プロフィール

強硬策を進言

トランプ大統領は29日午後、臨時国家安全保障会議(NSC)を緊急召集した。マイク・ポンペオ国務長官、マーク・エスパー国防長官、ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、マーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)ら6人を別荘に呼んだ。

ポンペオ国務長官はその席で「ここで軍事作戦に踏み切らなければ、大統領閣下、あなたはオバマ(前大統領)同様に腰抜け(coward)外交の批判に晒されます」と強硬策を進言したというのだ。トランプ氏が「オバマ」という固有名詞に過剰反応することを承知の上で背中を押したのである。俄かに信じ難い話であるが、事実である。

マイク・ポンペオ国務長官 photo by gettyimages
 

そして同日午後6時46分(米国東部時間)から開かれたポンペオ、エスパー両氏の共同記者会見でエスパー氏が「我々はイラン及び(イスラム教シーア派の)武装組織の悪行を思い止まらせるための追加措置を取ると通告する」と述べた。

そのエスパー氏がソレイマニ氏殺害に先立つ1月2日午前(同)に「受けた攻撃に対する報復措置は適切な時期、方法、そして場所で順次遂行する」とツイートしているのだ。一方、1日にワシントンに戻ったポンペオ氏は水面下の外交攻勢に傾注する。国務省OBのアラビストを介してハメネイ体制の要路にアクセスまでしたとされる。硬軟交えたダブルトラック路線である。

その結果が、先述した8日のイランの自制的な報復攻撃だったのだ。トランプ大統領は8日午前11時半(米国東部時間)、ホワイトハウスでの全米向け演説の中で「米国はすばらしい軍と装備を持っているが、軍事力は使いたくない。米国の軍事と経済両面の強さが最大の抑止力だ」と述べた。こうして米イランの全面衝突は回避されたのである。