女性の死に方が「男性化」しているという、驚くべき現実

法医解剖医が見た、女性の痛みや苦しみ
西尾 元 プロフィール

老老介護の死

一人暮らしをしていれば、何か急な病気で亡くなった時、解剖される危険性は高くなる。しかし、誰かと一緒に暮らしていれば、解剖されないような死に方をするのかというと、必ずしもそういったわけではない。

この日運ばれてきたのは、70代の女性。80代の夫と二人で暮らしていた。

夫は認知症を患っており、彼女は夫の看護をしていた。自宅で亡くなっている女性を見つけたのは、定期的に訪問している看護師だった。

看護師が彼女を見つけた時、夫は部屋で普段と変わらないように生活していたという。妻の様子がおかしいことに、夫は気づかなかったらしい。見つかったのが冬だったので、妻の体の腐敗はそれほど進んでいなかったが、それでも死後1週間くらい経っているようだった。

〔PHOTO〕iStock

解剖すると、死因は脳出血だった。

妻の死後、夫がどのように生活をしていたのかはよくわからない。だが、看護師の訪問が遅ければ、夫も亡くなっていたかもしれない。

長年連れ添った夫のそばで、妻が亡くなった状態でみつかる。二人で暮らしていたからといって、そういった死に方をすることもある。この国では、今後、こういった死に方が珍しくなくなっていくのだろう。

 

認知症に限った話ではない。

二人で暮らしているからといって、一人で生活することが難しい人を抱えた家庭では、介護している人が何か急な病気になった時、介護されている人がそのことを外の誰かに連絡できるとはかぎらない。

介護している人は、二人暮らしをしているからといって、実質上、一人で生活しているのと変わらない。最近では、二人暮らしをしている人が二人とも亡くなって、二人同時に解剖になるケースも増えている。