2月26日 仏の物理学者、鉄道技師クラペイロン誕生(1799年)

科学 今日はこんな日

7地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1799年のこの日、フランスの物理学者、鉄道技師のエミール・クラペイロン(Benoît Paul Émile Clapeyron、1799-1864)がパリに生まれました。

エミール・クラペイロン Photo by Public Domain

フランスの産業革命は、フランス革命のために遅れてはじまったとされていますが、先行したイギリスに比べて、当初から理論教育が比較的進んでいました。軍人で数学者のラザール・カルノー(Lazare Nicolas Marguerite Carnot、1753-1823)が創設した高等工科系の学校である「エコール・ポリテクニーク(Ecole polytechnique)」もその1つです。

【写真】エコール・ポリテクニークの学生
  エコール・ポリテクニークの学生。ナポレオン政権下での技術将校養成学校という伝統を反映して、軍事パレードなどの際には、19世紀風の大礼装を着用する Photo by Getty Images

クラペイロンは、創設者の息子であるニコラ・カルノー(Nicolas Léonard Sadi Carnot、1796-1832)に6年ほど遅れて、1818年にこのエコール・ポリテクニークに入学しました。この2人は、在籍期間が近いものの、同時期を過ごしたことはなかったようです。

【写真】カルノー父子
  父ラザール(左)と長男ニコラのカルノー親子。父のラザールは数学者で軍人でもあったが、革命派だったために王政復古の際に国外追放された Photos by Getty Images

しかし、後に鉄道技師としての仕事を支えた理論として、熱力学理論「カルノー・サイクル」を、1834年の『動力に関する覚書』(Mémoire sur la puissance motrice de la chaleur)で解説しました。

「カルノー・サイクル」は、ニコラ・カルノーが1823年の著書『火の動力、および、この動力を発生させるに適した機関についての考察』で発表していました。

温度の異なる2つの熱源の間で動作する可逆熱サイクルの一種で、実際には実現不可能な思考実験ともいえるものです。

【図】カルノー・サイクル

【カルノー・サイクル】

  1. 高音の燃焼炉にシリンダーをつける。熱が燃焼炉からシリンダー内の空気へ流れる。ピストンが外へ押し出される〈等温膨張〉
  2. ピストンはさらに押し出されるが、燃焼炉とシリンダーを離したため空気の温度は下がりはじめる〈断熱膨張〉
  3. シリンダーに冷却器をあてると、熱がシリンダー内から冷却器に逃げる。ピストンが外から押しこまれる〈等温圧縮〉
  4. ピストンはさらに押しこまれるが、冷却器とシリンダーを離したため空気の温度は上がりはじめる〈断熱圧縮〉

カルノー・サイクルは発表当時あまり評価されず注目もされていませんでしたが、クラペイロンが定式化し、グラフによって表現することによって、格段にわかりやすくなりました。

カルノー自身は、クラペイロンがその理論を紹介する2年前に、コレラによって36歳の若さで亡くなっていました。そして残念なことに、クラペイロンの奮闘にもかかわらず、カルノーの理論が大きく注目されることはありませんでした。

しかし、1840年代に入って英訳や独訳が出版されると、ウィリアム・トムソン(William Thomson、1824-1907)が自身の熱力学理論の参考にし、それが再評価のきっかけとなりました。

こうして、カルノーの思考実験が出発点となり、「熱力学第二法則」や「エントロピー」などの概念が発展していくのです。

 関連の日:6月26日 物理学者のウィリアム・トムソンが生まれる(1824年)

クラペイロン自身は、エコール・ポリテクニーク卒業後、鉱山学校でも学び、数学や土木の教師や、蒸気機関の設計者として活躍しました。サン・テティエンヌとリヨンの間に開通したフランス初の本格的な鉄道敷設では、中心的な役割を果たしました。

【写真】サン・テティエンヌーリヨン鉄道を描いた絵
  トンネル区間を行くサン・テティエンヌ〜リヨン鉄道の列車を描いた当時の絵。フランス革命で出遅れたフランスの近代化を進めたのは、クラペイロンのような科学者や技術者だった Photo by Getty Images

クラペイロンには著名な発明品や、後の科学者に大きな影響を与えた理論を提唱したことが少ないことから、高い評価を耳にすることはあまりありません。ですが、理論と技術とを見事に結びつけた、この時代に欠くべからざる科学技術者であったといえるでしょう。

オススメ関連書籍はこちら

エントロピーをめぐる冒険
初心者のための統計熱力学

難解、無味乾燥、とっつきにくい……エントロピーに悩んだのはあなただけではありません。カルノー、ボルツマン、ギブズらはいかに闘い、自然が隠しもつ神 秘を見つけだしたのか? この理論はなぜ、宇宙を支配するのか? 彼らの試行錯誤を追体験することで、あなたの目の前にもエントロピーが姿を現します! amazonはこちら