アパレル業界が「常時セール」という劇薬から脱却するために

「ファッション」を再興させる方法
井上 雅人 プロフィール

ファッションの意味を考え直す

とりあえずできることとしては、「アパレル」ではなく「ファッション」として、自分たちの事業を捉え直すことである。どうしようもなく普通のことではあるが、初心に帰るという意味でも、効果がないわけではない。

「アパレル」と「ファッション」の違いは、「アパレル」が、衣服やその周辺の製品を物質として提供していくのに対して、「ファッション」の場合、流行の身体のあり方を意味として提案するところにある。端的に言えば、物を提案するか、イメージを提案するかの違いだ。

 

アパレル産業と自己規定している限り、物を作って売る産業であるのは当然のことなので、グローバルな規模で、供給の合理化に邁進せざるを得ないのは当たり前である。

「ファッション」とは何かについては、拙著『ファッションの哲学』(ミネルヴァ書房)に書いているので、そちらをぜひご覧いただきたいが、アパレル産業とされているものを、ファッション産業だと捉え直すと、合理的に生産する以外にも、すべきことがたくさんあるのに気づくだろう。特に重視したいのは、「アソシエーション」の構築だ。

アソシエーションは、共同体の一種で、地縁的なつながりで形成される「コミュニティ」に対して、何らかの目的を共にする人々によって形成されるものである。代表的なのは企業や学校だが、そこまで明確に構成員が規定されたアソシエーションだけが、アソシエーションではない。

ファンの集まりや同好会のように、趣味嗜好の追求を理念に持ち、構成員が誰なのかはっきりしないアソシエーションもある。それでも、それらがあることで、社会生活はずいぶんと豊かになる。職場や家族のなかには収まらない、生きがいによるつながりを生み出すからだ。