アパレル業界が「常時セール」という劇薬から脱却するために

「ファッション」を再興させる方法
井上 雅人 プロフィール

自分で首を締めたアパレル業界

こういった危機に対して、アパレル業界が取ってきた主な対策は、セールやアウトレットといった安売りである。マーケットが即座に反応してくれる商品を市場調査で調べて、デザインする期間を極限まで短くし、製造コストも可能な限り下げて、市場が次のトレンドに関心を移す前に素早く投入する。

次から次へと新製品の市場投入を繰り返していくには、回転率を高めなくてはならず、そうなると在庫を抱えてはいられない。だから、年中セールをして、同時にアウトレットでも売りさばく。

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客側も、すぐセールになることは見越しているから、正価では買おうとしない。その結果、セールが常態で、むしろセール以外のシーズンの方が、特別に高い時期になってしまうという逆転現象が起きた。今や、かつては「高級」の代名詞であった日本橋の百貨店に出向いても、店員がエスカレーターで通り過ぎる客に向かって、「ただいまお安くなっておりまーす」と声をかけるようになった。

それでも多くの客は、その場で買わずに、より安いオンラインストアや、似たような安い製品をネットで検索する。そこで百貨店のいくつかは、その状況を逆手に取ろうとして、「ショールーミング」ということを言い出した。店舗は売る場所ではなく、実物を手に取って確認してもらうショールームの役割を担ってくれればよく、実際の購入は自社のオンラインストアで、ということだ。

しかし、本当に街ゆく人々は、そんなことをするのだろうか。