家賃滞納という貧困』という書籍の著者である司法書士の太田垣章子さんは、多くの家賃滞納に陥った人たちにも会ってきた。昨今増えてきたのが「高齢者の家賃滞納」だという。実例にふれるにつれ、高齢になってからの「終活」のみならず、「住活」が大切だということを実感してきた。その実体験と対策を1冊にまとめたのが『老後に住める家がない!』(ポプラ新書)だ。「住む場所」は人の生活の基盤となる。まさに「終活」の中心にもなるのだ。

持ち家にしろ、賃貸にしろ、どこにどのように暮らすかを早めに考える必要だあるという。ひとりの男性の、切なくも誠実な「終活」の実例とともに、『老後に住める家がない!』より抜粋掲載させていただく。

若いうちから考える癖を

今までの日本は、高齢者を家族や親族が支えてきました。だから一生懸命に生きてきて、高齢者になれば身を委ねていれば良かったのです。ところが核家族化が進み、家族関係が疎遠になり、家族はいるけれど長年連絡も取っていないという人も増えました。明け渡した(夜逃げをした)家に、だれかの骨壺が置き去りになっていたのを私は目撃したことがあります。自分の亡くなった後のことをどうするか、若いうちから個々が考えていかねばなりません

小学2年のときに、父親が失踪してしまったという女性がいました。父親は他人の連帯保証人になり、それが理由で多額の借金を背負い、自宅にまで借金取りが連日押し寄せ、そして気が付いたら父親がいなくなってしまったのです。それ以来、一度も会ってもいないし、連絡も取っていないということでした。

小学2年生のときにいつの間にかいなくなっていた父親。「自分たちを捨てた」と思っていた父が亡くなったと連絡がきたら…Photo by iStock

ある日、彼女の元に役所から「お父さんが亡くなりました」という連絡が入り、動揺して事務所に相談に来られました。

借金で逃げたお父さんだし、家族の前から消えて40年も経っています。「怖いから相続放棄したい」というのが、彼女のリクエストでした。同時に役所との連絡も、自分ではしたくないということで、私が代わりに打合せしたのです。

その時に役所の方からお聞きした、お父さんの最期があまりにも見事でした。