写真はイメージです〔PHOTO〕iStock

「お金がないから赤ちゃん放置し死亡」は「避けられた人災」だった

支援は「存在」するだけでは足りない

これは「殺人」ではなく「人災」だ

お正月にとても悲しい事件が起きた。東京都足立区で新生児が自宅で死亡してしまった。赤ちゃんを放置して死なせたとして、母親Aさんが逮捕されたのである。

報道では母親の実名が記されているが、筆者はこれを「避けられた人災」であると考える。母親を犯罪者とみなすことは問題の本質的な解決にはならないという視点から、彼女を実名呼び捨てではなく「Aさん」と呼ぶ。

報道によると、Aさんは12月28日朝に自宅浴室で出産、29日、30日ともにアルバイトに出かけている。多くの場合、出産した女性は数週間~1カ月は寝て過ごし体力を回復する。それなのに出産翌日から働かねばならないAさんの経済状況が伺える。赤ちゃんが亡くなったのは1月1日で、弱っている様子を見てAさん自ら119番通報した。

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私はすぐ「これは殺人ではなく人災だ」と思った。この赤ちゃんの命は医療と福祉が的確に届いていれば、助けられただろう。刑事司法の観点では、Aさんは保護責任を放棄した罪が問われる。しかし、状況を総合的に判断すれば、Aさん自身も日本の医療・福祉に「取り残された被害者」であるように私には映った。

Aさんが出産したのは自宅浴室。また、赤ちゃんは死亡時の体重が1300グラム台と小さく、早産または極(ごく)低出生体重児だったと思われる。通常なら高度な医療ケアが施されるはずの赤ちゃんを病院に連れていけなかった理由を「お金がなかった」とAさんは話している。