世界中が「他者との共存」を拒否し「離脱」を求め始めた現代について

1989年から世界はこんなに変わった
山崎 望 プロフィール

こうした離脱は、イギリスのみで起きている動きではない。ポピュリズムによって大統領の地位にトランプを押し上げたアメリカは、パリ協定からも、TPPからも、イランなどと核合意からも離脱した。メガ経済圏が模索される中で、インドはRCEPの交渉からの離脱を宣言した。G8から「離脱」していた核大国であるロシアはINFからも離脱し、極東ではGSOMIAから韓国が離脱の姿勢を見せた。

問題は、ポスト冷戦の時代に育まれつつあったグローバルガバナンスの仕組みから、国家が離脱しつつある、というだけにとどまらない。Brexitをしたイギリスからはスコットランドが離脱する可能性も指摘されている。こうした底流には「しがらみ」に抗う声をあげ、そこから離脱し、忠誠を誓う「われわれ」を求める人々の姿がある。

 

自由主義からの「離脱」

さらに30年前、社会主義圏の人々がそれを求めて声をあげた自由主義から離脱しようとする人々もいる。『民主主義を救え!』を著した若手政治学者のY・モンクによれば、グローバル化がもたらした自由の果実から「取り残された」人々は、自由がもたらす荒波からの離脱を試みている。

人々はポピュリズムという形で「人民people」の正統性を掲げ、自分達を置き去りにするエリートや、自由の果実を奪うと考える移民や少数民族を排斥する声を上げている。世界を席巻するポピュリズムの背後に、自由主義の下で行われる競争から「取り残された(もしくは、その不安を感じる)人々」がいることが実感できるだろう。

その中には「多数派」とされてきた人々さえ含まれている。少数民族の権利、信仰の自由、同性愛者の権利といった「政治的正しさpolitical correctness」に脅威を感じる人々も、自由主義からの離脱を試みている。こうしたポピュリズムが国家権力を掌握した場合、多数派の国民に支えられて自由主義から離脱していく「イリベラルデモクラシー」と呼ばれる政治体制へ移行する事例が指摘されている。いわば「自由主義なき民主主義」である。