世界中が「他者との共存」を拒否し「離脱」を求め始めた現代について

1989年から世界はこんなに変わった
山崎 望 プロフィール

政治面では、世界のスタンダードとされてきた自由民主主義が揺らぎ、「権威主義化」が進んでいる。権威主義体制の中国やロシアは影響力を高め、ポーランドやハンガリーなど1989年以来、民主化を遂げてきた諸国の一部では、従来の動きに反するような「民主化の逆行」が起き、自由民主主義が定着していた諸国でさえ、その価値観に挑戦するポピュリズムが台頭している。

他方では大規模なデモや占拠運動などの直接民主主義の復権が起きている。さらに国際社会では、グローバル化に逆行するがごとく、主権国家が存在感を取り戻し、「われわれ」と「彼ら」を分断する「壁」を求める声が大きくなっている。

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こうした現代世界を、「ポスト冷戦の世界」とは対照的に、「再び壁によって閉ざされつつある世界」「対立が高まる世界」として、描くことができよう。自由主義と民主主義の価値を疑う声は広まりつつあり、皮肉にも国境を越える情報と経済の爆発的な広がりは、こうしたイメージを現実化する促進力となっている(このように単純に、二つの世界を描ききることには無理があり、現実には二つの世界は複雑にからまり、どの局面をみるかによって異なった相貌があらわれるのだが)。

国際的しがらみからの「離脱」

現代の世界は、前出のハーシュマンの言葉を借りるならば、どのように表せるだろうか。それはグローバル化や自由民主主義に対して異議を申し立てる国家、政党や運動の広がりであり、それによって様々な対立が生れる世界であろう。

 

ここで注目したいのは、「ポスト冷戦の世界」で根付いてきた「しがらみ」からの「離脱」が多発している、という現象である。その先にいかなる世界が広がるのであろうか。グローバルガバナンスや自由民主主義に対する「異議申し立て」の「声」に始まり、そこからの「離脱」、さらに「忠誠」の対象が変化しているのではないだろうか。

離脱の中でも、Brexitは世界に大きな影響を与えた。もはやイギリスはEU内部にとどまり声をあげるのではなく、そこから離脱することを民主主義によって選んだのである。それは欧州統合のプロジェクトに対する「忠誠」の消滅である。