世界中が「他者との共存」を拒否し「離脱」を求め始めた現代について

1989年から世界はこんなに変わった
山崎 望 プロフィール

30年前の「1989年」を象徴的な分岐点として、冷戦構造を特徴とした世界の仕組みは大きく変わった。経済面では、すでに西側陣営で胎動していた、政府の役割を抑制して市場原理に基づく競争を重視する新自由主義が旧社会主義圏を飲み込み世界に広がり、グローバルな市場が形成された。

政治面では、旧社会主義圏のみならず、それ以前から進んでいた「民主化の第三の波」(S・ハンチントン)により、自由民主主義体制が政治体制のスタンダードと認識されるようになった。さらに国際社会では、グローバル化に対応するべく、主権国家に加えて多様な国際機関や地域共同体、企業や非国家的組織などのアクターから成り立つ「グローバル・ガバナンス(統治)」が模索された。

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以上、少々戯画化してはいるが、「ポスト冷戦の世界」は、冷戦構造に彩られた世界との対比で言えば、壁によって閉ざされていない「開かれた世界」、また「対立のない世界」として描くことができよう(もちろん旧ユーゴやパレスチナをはじめ、数々の重要な例外を忘れてはならないが)。北半球の大きな部分において、自由主義と民主主義の価値は疑う余地のないものとされ、国境を越える情報と経済の爆発的な広がりは、こうしたイメージを現実のものと人々に認識させることに大きく寄与した。

再度まとめると、「1989年」とは、社会主義体制からの「離脱」に始まり、東欧革命にみられる異議申し立ての「声」を経て、開かれた対立なき世界――おそらくは自由民主主義の理念に支えられている――へと「忠誠」の対象が変化する契機となった年であった。

 

「逆回転」が起きた30年後の世界

では友人が会社を辞めた2019年――1989年から30年が経った世界はどのようにスケッチすることができるのだろうか。

経済面では、GAFAのような超巨大企業が国境を越える帝国の如き相貌を見せ、新自由主義は現代世界の「条件」となりつつある。M・フィッシャーが『資本主義リアリズム』で書いたように「いまや資本主義の終わりより、世界の終わりを想像することの方がたやすい」。前出の友人の認識もまた同様であろう。われわれはそこから抜け出すことができない、新たな監獄の中で生きているのかもしれない。