側近の告白! ソフトバンク・孫正義の知られざる「頭の中」と「素顔」

300年先までを記した巻物を片手に…
砂川 洋介 プロフィール

孫正義を「ほめ倒した」父の教え

三木氏が言う。

「この戦術はいまのキャッシュレス決済の『PayPay』事業でも生かされています。100億円キャンペーンはその典型。これだと決めれば、一気に全面展開し、タダでモデムを配布したり、キャッシュバックしたり、大盤振る舞いで会員を増やす。どちらも多額の初期費用が掛かりますが、やりとげられれば一気にシェアを獲得できる。

こうした大胆な戦術の効果について、孫社長は子どものころから経験していたそうです。お父さんの孫三憲さんの影響です。

 

鳥栖市や福岡市で幅広く事業を営んでいた三憲さんは、喫茶店も経営していました。そのとき三憲さんはお客さんを呼ぶために、まずコーヒー無料券を配ったそうなんです。『コーヒーがタダならお客はやって来る。コーヒーだけ飲む客もいるが、中にはパンも食べる客もいる。客を集めてコーヒー以外で儲けを出すのだ』というわけです。

孫社長はこうしたお父さんの姿を子どものころから見て、ビジネスの訓練を積んできた。いまのソフトバンクグループの事業モデルは、孫さんが実体験をもって身につけたものだったのです」

三木氏はこうした話を久留米大学附設高校の同級生で、孫氏の弟の孫泰三氏からも、よく聞かされたという。三憲氏はとにかく子どもたちの行動を抑制することはなかったという。自分で考えて何かをやろうとする子どもたちに評論めいたことは一切言わず、ただ「それはすごい考えだ、やってみろ」とほめ続けた

〔photo〕gettyimages

それもただ「褒める」という感じではなく、「褒め倒す」というレベルだったという。こうした教育は孫氏の「達成力」にもつながっている。

「孫社長は訓練し、積み重ねることで『達成する』喜びを知っているのだと思います。それはひとえに三憲さんの育て方の賜物と言えるでしょう。子どものころ、体を鍛えようと思った孫社長は、『大リーグ養成ギブス』を開発し、鉄下駄を履いていたというマンガのような逸話まで残っています。三憲さんの教育が孫社長の実力の原点にあるのは間違いないでしょう」