地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
フランスの物理学者で、電流の単位「アンペア」にその名を残す電磁気学の祖、アンドレ=マリ・アンペール(André-Marie Ampère、1775-1836)が1775年のこの日、生まれました。
アンペールは、フランス中南部の都市リヨンで生まれ、その後すぐ、アンペール一家はリヨン近郊の村ポレミューに移り住みました。法律家であった父親の教育方針によってアンペールは学校に通わず、自宅で父親の手ほどきのもと興味のあるものを自由に学びました。
彼自身もほんの幼いころから好奇心や知識欲が非常に強く、少年期になると、その対象は科学や数学のほかにも、哲学、歴史、文学など、知識全般に及びました。
しかし、18歳のころ、フランス革命の波がリヨンにも押し寄せ、父親が反革命の思想であると断じられ、処刑されてしまったのです。また、24歳で結婚した最愛の妻も息子の出産からほどなくして亡くなり、これらの不幸な出来事が若いアンペールに大きな心痛となりました。
ようやく学問に対する情熱を取り戻したアンペールは、教師を務めながら数学論文を投稿し続け、やがてリヨン大学やパリ大学の講師となり、30歳ころにはリヨン大学で教授に任命され、パリの学士院にも名を連ねるまでになりました。
このころに、デンマークの科学者ハンス・C・エルステッド(Hans Christian Ørsted:1777-1851)による「電流の流れる電線の近くでは方位磁針が振れる」という電流の磁気作用についての発見がパリの学者たちの間に伝わりました。
学士院で行われた公開実験を見ると、アンペールはに非常に興味をそそられ、電気と磁気の研究に没頭するようになりました。エルステッドの発見を聞いた1週間後には、早くも彼の研究成果である「アンペールの法則」を論文で発表しています。
2本の導線を平行に設置し電流を流したとき、導線間には力が働くことを実験で確かめました。そして、導線に電流を流すと、電流の方向を右ねじの進む方向としたときに右ねじの回る方向に磁場が生じる法則を発見したのです。これは、電流の流れる方向と右手の親指を一致させたとき、残りの指が曲がる方向に磁場が発生する、有名な「右手の法則」となります(電流の方向をねじの進む方向、磁場の回る方向をねじを回す方向ととらえ、右ねじの法則ともいう)。
また、彼は、電流とは電気を帯びた無数の微小な粒子が流れていることである、と分子的流体の理論で説明しようとしました。しかし、この理論は当時の科学者たちに受け入れられず、60年あまりもの後に、電子が発見されて初めて注目されるようになった考え方でした。
その後、アンペールはロンドン王立協会やスウェーデン王立科学アカデミーの外国人名誉会員になるなど、国内外の学会で高く評価されました。後に、ジェームズ・クラーク・マクスウェル(James Clerk Maxwell、1831-1879)は、「電気におけるニュートン」と、彼のことを高く賞賛していたということです。
最愛の妻に先立たれた後には再婚した相手とは折り合いが良くなく、また子供たちも幸せな暮らしに恵まれないなど、家庭生活においては苦労が絶えなかったようです。1851年に亡くなり、パリのモンマルトル墓地に埋葬されました。
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