10月14日 独の物理学者F・コールラウシュ誕生(1910年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

電解溶液の電気伝導の度合いを測る「コールラウシュ・ブリッジ(Kohlrausch Bridge)」で有名な、ドイツの物理学者フリードリッヒ・W・G・コールラウシュ(Friedrich Wilhelm Georg Kohlrausch、1840-1910)が1840年の今日、ドイツ北西部のリンテルン(現在のニーダーザクセン州)に生まれました。

【写真】フリードリッヒ・コールラウシュ フリードリッヒ・W・G・コールラウシュ photo by gettyimages

コールラウシュは、交流による電解質の抵抗測定法を考案し260種の溶液の精密測定に成功しました。

電気抵抗の測定には従来ホイートストン・ブリッジ回路が用いられていましたが、電解溶液に直流を流すと、電解反応が進んでしまうため、溶液の質が変化してしまい正確な測定ができませんでした。

そこで、電気分解反応(電極分解)が起こらないよう、高周波の交流電流を用いて測定します。この測定に用いるのが、コールラウシュ・ブリッジ(Kohlrausch Bridge)とよばれるブリッジ回路です。ブリッジ回路とは、2つの並列回路に分かれたあと別の1つの導線で再結合する閉回路のことで、電気回路に馴染みのある方なら、ダイオードを用いた整流回路などでおなじみかと思います。

 

コールラウシュ・ブリッジの原理は、基本的にはホイートストン・ブリッジと同様です。測定する電解溶液に交流発振器から交流電圧を加え、可変抵抗を動かしながら、レシーバー(受話器、イヤホンなど)の音が聞こえなくなった点を求めます。標準抵抗R' と可変抵抗機VR(すべり抵抗線などを用いた)の抵抗値(Ra、Rb)から、測定する溶液の抵抗値Rを読みをとります。

【図】コールラウシュ・ブリッジの基本的なしくみコールラウシュ・ブリッジの基本的なしくみ

コールラウシュは実験により数々の溶液の伝導率を調べ、そこで積み重ねられた知見から、1875年にイオン独立移動の法則、1900年にコールラウシュの平方根則を見出し、それらは後に「コールラウシュの法則」と呼ばれるようになりました。

電場のない溶液中でもイオンが存在しているという考えには至りませんでしたが、電気分解の主役であるイオンが独立して運動すると考えたコールラウシュの概念は、ほぼ今日のようなイオンの概念に通じます。彼の理論は、教え子であり、後に電離説を見出したスヴァンテ・アレニウス(アレーニウス、Svante・A・Arrhenius、1859-1927)らに受け継がれます。

スヴァンテ・アレニウススヴァンテ・アレニウス photo by gettyimages

コールラウシュは、弦電流計、磁力計なども考案し、不純物や電解質を含まない純水の精製などにも取り組みました。また、実験物理学の古典的名著『実験物理学便覧』(Lehrbuch der praktischen Physik、1869)は版を改めながら長く愛読されました。