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故・八千草薫さん、膵臓がんでも変わらなかった「平らかな人生」

老いてもまるで少女のように

「ついに来たわね」

「病室で膵臓がんと診断された直後も『まあ、ついに来たわね』と落ち着いていました。

治すのが難しい病気ですが、『いろいろな治療法があるんでしょうけれど、信頼する先生が右と言うなら右へ行く。それが一番よ』と腹が据わっていた。立派な人だなと改めて思いました」(所属事務所の関係者)

女優・八千草薫さん(2019年10月24日、88歳没)は、2018年の末に予後が悪いことで知られる膵臓がんであることが判明する。

ところが前述のように、八千草さんは周囲が驚くほど淡々と、自分の病状を受け容れていた。

誰もが思わずふさぎ込んでしまうような状況でも、取り乱さず、いつもの自分を崩さない。八千草薫という名女優は、最期までそんな女性だった。

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八千草さんは'47年に16歳で宝塚歌劇団に入団し、娘役として絶大な人気を博して以来、女優として第一線で活躍。

'77年、家族に隠れて不倫をする主婦役を演じ、「清純派」の殻を破った代表作『岸辺のアルバム』(TBS系)から、遺作となった'19年の『やすらぎの刻 道』(テレビ朝日系)まで、幅広い作品に出演し、女優として生涯現役を貫いた。

整いすぎているとさえ言われた美貌はもちろん、穏やかな語り口や、楚々とした立ち居振る舞いが人々を虜にしたが、何より驚くべきは、そうした八千草さんのたたずまいが生涯にわたり変わることがなかったという点だ。

長年、親交のあった俳優の柳生博氏が言う。

「もちろん、ヤチさんはとんでもない美人でしたよ。でも、造作の美しさなんて2~3日もすれば慣れてしまうもの。やっぱりヤチさんの一番美しいところは、得も言われぬ凛とした雰囲気。背筋もいつもピンと伸びていて本当に素敵だった」