男性の収入は「遺伝」でこれだけ決まるという「冷酷すぎる現実」

それでも私が楽観的でいられる理由
安藤 寿康 プロフィール

学校を卒業したてのころ、収入の個人差を一番説明するものは共有環境で、およそ60%がこれで説明できる。一方、遺伝の影響は20%に過ぎない。

共有環境とは家族が共有することでお互いに類似性を作り出す環境の効果である(これがあると遺伝の影響とは別に、きょうだいの類似度がその分だけ増す。類似性の原因が遺伝だけだと、50%の遺伝子を共有する二卵性双生児の類似性は、100%遺伝的に等しい一卵性双生児のちょうど半分程度になるのだが、これに共有環境の影響が加わると、二卵性双生児の類似性は一卵性の半分以上になるから、それがどの程度あるかをデータから算出できる。この場合一卵性の類似性が80%に対して、二卵性も70%ほどである)。

つまり初めて職業に就くときは、親の意向や親族の人脈が、直接にせよ間接にせよ、影響力を及ぼして、初任給のよい会社、儲かる仕事にありつくことが出来る人もいれば、そんな境遇に恵まれずに零細な会社、ぱっとしない仕事に甘んじて、キャリアをスタートさせざるを得ない人もいることを意味する。

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ところがそんな親の七光りや役に立たない親族のおかげで与えられた共有環境による貧富の差は、その後20年余りをかけて仕事をこなし一人前になるに従って、徐々にその人自身の遺伝的実力が顕わになってゆく。

働き盛りの40代半ばに向かって、共有環境の影響はどんどん減少し、逆に遺伝の影響が60%を説明するほどまで増加するのだ。

あわせて非共有環境の割合も増加する。つまりその人が、実力とは別に、たまたまどんな儲かる仕事の機会にありつけたかということも30~40%近くを説明するというわけである。

つまり男性の収入は、その人の遺伝的素質をどれだけ伸ばしつづけ、そのときたまたまどんな仕事に恵まれていたかでほぼ説明がつき、はじめあった親や親族のコネの影響など雲散霧消してしまうのである。

行動遺伝学者として、こんなに恐ろしくも興味深い結果は、なかなかお目にかかれるものではない。それは多くのことを考えさせられる。