男性の収入は「遺伝」でこれだけ決まるという「冷酷すぎる現実」

それでも私が楽観的でいられる理由
安藤 寿康 プロフィール

行動遺伝学の冷酷な現実

知能や学力の遺伝率が50%以上というのは受け入れにくい数値かもしれない。だが、それだって学校さえ卒業してしまえば、あからさまにテストで比較されることもないから、出身校や学歴を披露させられることなく、いま恥ずかしくない仕事をしてきちんと生活さえできていれば、気にすることはないだろう。

そもそも学力だって、きちんと学習できる環境が与えられれば、与えられない環境で育った場合と比べて、遺伝的に同じ地頭であっても、発揮される能力としては成長する。だから学力や知能は、学齢期にあっては、遺伝以外にも家庭環境の影響も30~40%くらいある。

学習はそのときにいる環境も重要な要因だ。学校を卒業しても、仕事についての専門的な知識を学習することによって、学校では発揮されなかった能力がそれなりに伸びる。

問題は、学校で発揮されなかった能力が、仕事経験で学習した専門知識によってそれなりに伸びたとして、それがどれくらい「それなり」かということだ。

 

学校卒業後に獲得され発揮される能力は、仕事や業務の種類が無限といっていいほど多様であることを考えると、数学や英語の能力のようにテストで測れるようには単純ではないが、それを仕事によって得られる「収入」で表すと、身長や体重、知能指数やパーソナリティと同じように、単一の指標として行動遺伝学のなかで扱える。

つまり身長や体重、知能と同じように遺伝率や環境の影響の大きさを見積もることができるわけだ。

教育経済学者の中室牧子氏らは、成人してから50歳くらいまで、収入に及ぼす遺伝の影響がどのように変化するかを調べた。それを共有環境や非共有環境と並べて図示すると、このようになる(男性の場合)。

ここで行動遺伝学は冷酷な現実を露呈させている。