日本人が知らない、フィンランドで「同性婚」が可能なワケ

市民が法律を変えた、その意味と可能性
岩竹 美加子 プロフィール

市民イニシアティブによる法律

同性婚には、政治的な側面もある。その合法化で特筆すべきなのは、それを求めるのも反対するのも、市民イニシアティブによるものだったことだ。

市民イニシアティブ法が発効したのは、2012年。6ヵ月以内に最低5万人の賛同の通知や署名があった場合、国会で取り上げなければならない事が規定された。5万人は、約550万の人口の1%弱である。

2017年の婚姻法は、フィンランド初の市民イニシアティブによる法律である。それはまた、市民イニシアティブとして、これまでで最大の賛同を得た。最初の1日で10万人、最終的には16万人以上が署名したのだ。

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この市民イニシアティブの名前は、 英訳すると「I do 2013キャンペーン」である。結婚式での「します(I do)」という言葉と、イニシアティブを始めた年が冠されていた。

教会での結婚式で、神の前で誓う言葉は、 脱宗教化された「シビル結婚」にも残された。教会での結婚か「シビル結婚」かを問わず、結婚式の核になる言葉であり、それをさらに同性婚にも継承していくことをイメージしていた。「I do 2013キャンペーン」によって、同性婚が国会で承認されたのは2014年12月である。

2015年春、それに反対して「純正な結婚イニシアティブ」という運動が起こされた。最終的に、10万人の署名を得て国会で取り上げられたが、2017年2月に否決された。そして、翌月、同性婚を認める婚姻法が発効。

「純正な結婚イニシアティブ」で興味深いのは、その主張が1980年代にされた夫婦別姓への反対とほぼ同じだったことだ。同性婚は「家族の形を壊す」「結婚制度を壊す」「伝統が脅かされる」などの意見が出された。それを国会で支持したのは、「基本フィンランド人」と「キリスト教民主主義」の政党である。 

 

一方、日本の結婚は…

ここで日本の結婚に目を移すと、結婚は宗教や神学の問題ではないことは、大きな違いとして挙げられるだろう。

日本では、歴史的に結婚と宗教の結びつきは強くなかった。「神の前で」結婚を誓うキリスト教式結婚の影響を受けて、「神前結婚」が創出されたのは1900年。皇太子時代の大正天皇の結婚式が、日本初の神前結婚である。

また、教会で結婚する場合も、その多くが宗教的な意味は持たないようだ。

日本で、同性婚が可能になる日は来るだろうか。同性婚への運動は、フィンランドでのように宗教と対峙、格闘、または宗教に準拠するものではないだろう。どういう議論と進展を辿るのか、興味深い問題である。