日本人が知らない、フィンランドで「同性婚」が可能なワケ

市民が法律を変えた、その意味と可能性
岩竹 美加子 プロフィール

教会の入口の階段で結婚式

東フィンランド大学は、2019年3月に同性婚に関する実用神学の調査を行い、534人の福音ルター派の牧師から回答を得た。それによると、牧師の約50%が同性婚を容認、約40%が容認しない。約10%は答えられない等である。

また、牧師の約30%が、同性婚の結婚式は行わないと回答。所属する教会の許可があれば行うと回答したのは約50%。教会は許可していないが、要請があれば結婚式を行うと答えた牧師は、約20%である。

一方、「シビル結婚」したカップルを教会で祝福することについては、半分以上が賛成した。祝福は、牧師が聖書の句を引用しながら行う儀式である。結婚式は認められないが、神の祝福は与えてもよいというスタンスである。

東フィンランド大学の調査では、牧師の考え方が急速に変化、多様化していることが明らかになった。また、教会内で論争や対立などの緊張関係があり、 結婚神学が大きく揺らいでいることもわかった。

 

「異性婚と同じように神の祝福を受けたい」

同性婚の合法化が議論されていた時、よく耳にしたのは「教会で挙式して、異性婚と同じように神の祝福を受けたい」という意見である。異性婚との平等が、主張の根拠にされた。

キリスト教は、 アダムとイブという始原の男女の物語を持つ。異性愛を規範とし、同性愛を罪としてきた。 フィンランドで、同性愛は1894年から1971年までの間、犯罪であり2年以下の禁錮刑を受ける場合があった。犯罪ではなくなった後も、1981年まで病気と見なされていた。

「教会で挙式して、異性婚と同じように神の祝福を受けたい」という考えは、異性愛と 異性婚を規範とするキリスト教の根幹的な価値や世界観を揺るがす。その一方で、「神の前で人は平等である」というキリスト教の平等思想に準拠するものでもある。

しかし、「教会で挙式して神の祝福を受けたい」という考えは、結婚を脱宗教化して、非宗教的な「シビル結婚」を出現させた歴史に逆行するものでもある。

フィンランドで、教会での結婚が広まったのは1500年代である。その後、1734年の法律によって、教会で結婚式を挙げることが唯一の結婚の形として規定された。しかし、人には宗教に縛られないで生きる権利もある。非宗教的な「シビル結婚」が可能になったのは1918年である。 「シビル結婚」は、結婚における脱宗教化の流れとして創出されたのだ。

さらに1970年代以降になると、結婚という制度を疑問視し、結婚しないカップルが急速に増えた。こうした流れに置くと、「教会で挙式して神の祝福を受けたい」という主張は、「反動的」である。同性婚は、異性婚の一歩先を行くものと見られる一方、「過去への回帰」の一面も持っていることになる。