日本人が知らない、フィンランドで「同性婚」が可能なワケ

市民が法律を変えた、その意味と可能性
岩竹 美加子 プロフィール

教会での結婚の場合

一方、教会での結婚の場合、結婚の障害となるものの調査は教区の教会が行う。 障害がないと判断されると証明書が出され、教会で牧師に会う。結婚の意義などについて話し合い、結婚式で引用する聖書のテキストを決める。また、結婚後、姓をどうするかを伝える。

福音ルター派教会での結婚式は、2人の入場、牧師の祝福、祈り、聖書のテキスト朗読、牧師の講話と進行する。続いて牧師は、「(全能の)神の前で、また教区の見守る中でお尋ねします。幸運の時も、逆境の時も貞節と愛を示し、◯◯を妻(夫)としますか」と聞く。この文言には、多少バリエーションがあるが、答えは常に「します (I do)」である。 

この後、指輪の交換と祈り、キスがある。結婚式の後、2人の結婚は教区の人別帳に記入され、さらに人口登録センターに記録される。

 

教会での同性婚の結婚式は禁止ではないが…

ただし、上記は異性婚の場合である。現在、すべての教会で同性婚は可能になっておらず、状況はやや入り組んでいる。同性婚の結婚式を行う牧師は少数派で、行わない牧師の方が多い。また結婚式は行わないが、「シビル結婚」した2人に、祝福を与える牧師がいる、というのが大まかな状況である。

福音ルター派教会は、公式には同性婚を認めていない。そのホームページには、2017年の婚姻法で同性婚が可能になったが、それは教会の教義に対する挑戦であること、教会は司教会議や教会会議による決定権を持つことが述べられている。婚姻法は、牧師が結婚式を行うことを義務づけておらず、福音ルター派教会の解釈を妨げないという。

ただし、牧師が同性婚の結婚式を行うことは、禁止されていない。牧師とその所属する教会の意見が、一致していないこともある。牧師が同性婚の結婚式をした場合、所属する教会の見解と異なるという理由で、結婚が無効化されることはない。しかし、その牧師に対して、教会が何らかの対処をすることはある。

教区に所属するメンバーの意見もさまざまである。同性婚を容認、または希望するメンバーがいる。教会で結婚するには、少なくともどちらかが教区のメンバーである必要があることは、教区からの離脱を防ぐものになる可能性がある。

しかし、同性婚の結婚式を行なった牧師や教会に対して異議申し立てをしたり、同性婚に抗議して離脱したりするメンバーもいる。教会にとっては、むずかしい問題である。

福音ルター派教会のホームページには、社会の変化と共に、教会の規約や規定も変わっていくことが望ましいこと、結婚の概念を拡大していく必要があること、将来的には見解が統一されることが望ましいことが述べられている。

こうした問題は、フィンランドでは「実用神学」「結婚神学」と呼ばれる領域に属す。結婚は、教会にとって聖書の解釈などに関わる神学的な問題なのだ。福音ルター派教会は、実用神学の現状や家族と結婚の変化に関する研究を研究者に依頼、調査も行っている。